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光で殺菌できることを知っていますか?
食品業界では、紫外線(UV-C)が、機器・器具、様々な機械の表面の殺菌に使用 されており、現在は光エネルギーを使って殺菌する原理を利用して、パルスライト 技術(Pulsed light technology)に発展させ、食品の品質や栄養価を維持するために、熱を使う ことなく食品中の微生物を減少させるプロセス(non-thermal process)としています。
作用の原理
従来の紫外線殺菌は、殺菌に影響を与える波長が250~260nmに位置する連続(continuous)紫外線(UV-C)を使用していました。(Abida et al.2014)パルスライトを 使用する際は、光を点滅(flash)させ、パルスエネルギーを爆発(マイクロ秒やミリ秒単位の場合もある)させるため、この方法で光を使用すると連続照射よりも大きなエネルギーを与えることができ、連続光を使用するよりはるかに深く素材の表面に浸透させることが可能になるうえ、点滅の回数が多いほどエネルギーが高くなると報告されており(Palmieri & Palmieri, 2005)、自然光の2万倍の濃度になることもあると言われています。(Mandal et al., 2020)この光エネルギーは、細菌を抑制する、光化学メカニズム(Photochemical mechanism)高熱メカニズム(Photothermal mechanism)光物理学メカニズム(Photophysical mechanism)という3つのメカニズムを引き起こすことができますが、それは1つだけ起きる場合もあれば、共起する場合もあります。
光化学メカニズムは、増殖に必要な微生物の細胞内のDNA遺伝物質に光エネルギーが反応し、微生物のDNA分子の結合を破壊することで、微生物のDNAの配列を変えたり、DNA鎖を破壊したりして、微生物を死滅させるまたは増殖できないようにするもので、(Palmieri & Palmieri, 2005)これが、微生物を破壊する主なメカニズムと考えられています。
高熱メカニズムは、微生物の胞子や細胞が大量の光エネルギーを急激に吸収する ことで起き、短時間に熱を発生させ、その辺りの微生物の胞子や細胞を変性させたり死滅 させたりします。(Abida et al.,2014)
光物理学メカニズムは、パルスライトが微生物の細胞壁を損傷させ、細胞膜(Plasma membrane)が収縮、あるいは細胞の漏出を引き起こすことが報告されています。(Mandal et al.,2020)
利点と限界
紫外線殺菌の利点は、薬品を使用することなく、温度制限下で表面の細菌の数を 減少させ、食品、特に熱に弱い成分を含み、タンパク質の分解、ビタミン・抗酸化物質の 分解や変性、香料の蒸発などの問題がある食品でも、生物学的に、より安全に、本来の良い品質を維持できることです。しかし、紫外線の利用にはまだ、食品本体に光を透過する性質がなければ、食品中の細菌の数を減らすことができるという制限があります。そのため、 一般的には、表面(卵の殻、カットフルーツやカット野菜の表面、食品接触面や包装面など)あるいは、飲料水など光を透過することができる製品などの殺菌に使用されています。
食品の品質に与える影響
パルスライトが与える食品の品質への影響については、Mandal氏とそのチームに よる研究論文(2020)にまとめられています。色、食感、におい、味など神経学的品質に ついては、パルスライトを使用しても製品に違いが見られないという報告がある一方で、 イチゴ、ブルーベリー、ラズベリーなどの果物・果実製品のグループでは、食感の低下を 示す研究報告もありました。野菜や果物、肉類では変色が報告されており、光エネルギーがカロテノイドやミオグロビンなど色に関わる食品成分の酸化を促し、変色を引き起こすと 考えられています。
いくつかの研究で、野菜や果物の食感は熱によって変化することがわかっており、これは光エネルギーが高濃度であるため高熱メカニズムが引き起こされるのではと考えられています。一方、風味の面では、光エネルギーが脂肪の酸化による悪臭の原因となる反応を誘発し、 牛乳や乳製品など脂肪分の多い食品に風味の変化を引き起こします。
栄養価への影響の研究では、パルスライトの照射により、光に敏感で酸化を起こすビタミンB2、ビタミンE、ビタミンCなどの栄養素が僅かに失われることがわかっている一方で、いくつかの研究では、野菜や果物に含まれるファイトケミカル(Phytochemical)の数が、ライトの照射により増えることも分かっています。これは、植物の光に対する メカニズムが原因と考えられており、例えば、ある研究では、ブドウに含まれる抗酸化物質レスベラトロール(resveratrol)が10倍にまで増加したことが分かっています。(Cantos et al.,2001)。
従って、光殺菌に利用する際は、それぞれの食品に適したプロセスを検討・設計し、微生物を十分に死滅させることができる適切なエネルギーを持たせる必要があり、食品の 品質に大きく影響するほど多くの光エネルギーを使いすぎないことが重要です。
食品への紫外線使用に関する法律
法的要求事項の点では、米国食品医薬品局(USFDA)が、紫外線の使用とパルス ライト技術の両方について許可要件を発行しています。 紫外線については、表面の微生物の抑制、食品製造用の水の殺菌、果汁中の病原性微生物の減少に使用するための許可要件があります。
パルスライト技術については、表面の殺菌を目的に使用することが認められており、光源、光の波長の性質や使用期間、使用可能な蓄積エネルギーが定められています。(USFDA, 2020)
参考文献
1. Abida, J., Rayees, B., & Masoodi, F. A. (2014). Pulsed light technology: a novel method for food preservation (review article). International Food Research Journal 21(3), 839-848.
2. Cantos, E., Espín, J. C., & Tomás-Barberán, F. A. (2001). Postharvest induction modeling method using UV irradiation pulses for obtaining resveratrol-enriched table grapes: a new “functional” fruit?. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 49(10), 5052-5058.
3. Mandal, R., Mohammadi, X., Wiktor, A., Singh, A., & Pratap Singh, A. (2020). Applications of pulsed light decontamination technology in food processing: an overview. Applied Sciences, 10(10), 3606.
4. Palmieri, L., & Palmieri, L. (2005). High Intensity Pulsed Light Technology. In D.-W. Sun, Emerging Technologies for Food Processing (pp. 279-306). California: Elsevier.
5. USFDA. (Last Updated: 11/10/2020). Retrieved from CFR – Code of Federal Regulations Title 21: Part 179 Irradiation in the production, processing and handling of food. https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?CFRPart=179&showFR=1
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