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食品の保存期間に影響を与える要素(パート1:内部要因)
食品の期限の表示
食品をどれだけ長く保存できるかというのには食品の安全性と品質の維持という二つの要素があります。安全性ですが、食べることができる期限または一般的によく言われる「消費期限」を過ぎると安全ではなくなるとされています。例えば、病原体が増殖したり法律で規定されている以上の毒素が蓄積したりします。一方で品質というのは香りや味、舌触りが消費者にとって満足のいくものかどうかを意味します。これには栄養素や様々な機能の質がラベル上に記されている通りであることも含まれます。食品の品質が記載されている通りではない場合や消費者が認められるものではない場合、安全に飲食できる状態であったとしても質の良い期間を過ぎたとみなされますが、これはラベル上にて「賞味期限」と記載されます。
何故食品の品質が変わったり劣化が発生したりするのでしょう?
食品の品質の劣化や安全性の低下は、主に食品内における化学反応や生化学反応より発生します。食品自体の構成要素により発生する可能性もあります。例えば、食品内に含まれている脂質と空気の反応による悪臭の発生や、果物の酵素により腐敗が進行し果物を柔らかくする、野菜の蒸散、光により色素が薄まる、砂糖とアミノ酸が反応して茶色になるなどが挙げられます。また、空気内や食品の表面上の微生物による生化学反応によっても発生します。例えば、病原体の増殖や臭いを発する物質の生成、微生物の酸生成、食品の表面から確認できる菌類の増殖などが挙げられます。この他には、物理的メカニズムにより発生する部分的な劣化もあります。例えば、水分子の構造を出入りする動きや結晶構造の配列などです。
食品を劣化させる6つの食品の内部要素
食品は種類によって構成要素や構造が異なるため、食品内で発生する化学反応も異なってきます。食品の劣化率の管理は、希望するだけ日持ちさせるためにレシピの調整や原材料の仕様の規定を行うことにより可能となるかもしれません。食品を劣化させる5つの食品の内部要素は以下になります。
1.酸アルカリ(pH)
食品における酸アルカリは、味に影響を与えるのみならず化学反応や生化学反応、食品の構造、食品内の微生物の成長にも影響を与えます。食品に含まれる成分の化学反応または様々な種類の酵素の生化学反応は、商品の酸アルカリにより発生率が変わってきます。例えば、食品内の色素の薄まり (1)(例 クロロフィ(Chlorophyll)、カロテノイド(Carotenoids)、アントシアニン(Anthocyanins)など。)、タンパク質の劣化(例 発酵乳製品の凝乳(curd)の発生。)、砂糖とアミノ酸による茶色への変色、酵素の働きによる食品の様々な分子構造の変化(例 ペクチン、炭水化物、タンパク質、脂質など)が挙げられ、特定の種別の親水コロイドのゲルを発生させたり砂糖や炭水化物分子の配列状態に影響を与えたりもします。
微生物ですが、酸アルカリが各種の微生物の生存や成長に影響を与えます。高酸性の食品の場合は微生物の生存率は低くなります。例えば、ボツリヌス菌Clostridium botulinumは酸アルカリ値が4.6未満である場合は成長することができません。 (2) 従って、適正衛生規範(GHP)では、微生物の成長の危険性があるために低酸性の食品と酸を変化させる食品について追加で規定を設けています。
2.水の活動
食品を劣化させる食品内の化学反応は分子の動きによるため、分子が動きやすい場合には化学反応の発生率も早まることとなります。つまり、食品の劣化が早くなるということです。分子を動きやすくする要因の一つとして水分子が挙げられますが、食品内の水の活動(Water activity: Aw)は画像に示されている通りです。分子が動けるように滑りやすくし化学反応を起こしやすくする働きがあります。また、食品を微生物が成長するのに適した環境にさせます。肉類や果物野菜、牛乳、パンなどの生鮮食品(Perishable food)はAw> 0.85、中間水分食品(Intermediate moisture food) はAwは0.6~0.84、乾燥食品(dehydrated food)はAw < 0.6となっています。(3)
3.物理的性質
構造、状態遷移性、結晶度などの食品の物理的性質は硬い食品及び液状の食品の歯ごたえに直接的な影響を与えるのみならず、食品の劣化率にも影響を与えます。これは食品の構造が食品を劣化させる化学反応の発生を促すことも防ぐこともあるからです。例えば、サイズの小さい粉砂糖はサイズの大きい氷砂糖よりも全体の表面積が広いので、空気からの湿気による化学反応が起こりやすくなっています。粘度の高い食品は前駆体分子が入り込み化学反応を起こすことができないため化学反応の発生が遅くなったり、玄米の米糠の食物繊維の構造のため白米よりも酵素の消化が難しいなどということがあります。
4.食品の構成要素の化学的性質
食品の化学的性質は、食品の化学反応に直接的な影響を与えます。前駆体物質の種別、濃度、水溶性、様々な溶解を引き起こす物質、反応発生における特殊性質に関わらずです。また、他の反応を早めたり抑止したりする成分は食品の劣化に影響を与えます。例えば、不飽和性の高い脂肪(二重結合、複数結合構造)は、空気内の酸素と酸化反応を起こし悪臭を放ちやすいですが、脂肪よりも酸化を発生しやすい性質を持つ他の物質を加えることで、空気との反応の発生に競合する形となり脂肪の劣化に抗します。(4)この他にも、微生物の成長に抵抗する力を有する種類の物質であれば、微生物が原因の劣化率を下げることが可能です。
5.生化学的性質
作物の呼吸や食品内の酵素の働きなどの食品の生化学的性質は、食品の劣化を引き起こすもう一つの要素であると言えます。特定の種の酵素は元々食品に含まれ、時間の経過と共に食品を変化させます。例えば、野菜や果物に元々含まれるペクチナーゼ酵素(Pectinase)は、時間が経過すると野菜や果物のペクチン構造を柔らかくさせます。空気に触れた際に特定の酵素が働き始め、例えば、ポリフェノールオキシダーゼ酵素(Polyphenol oxidase)は空気の酸素と化学反応を起こし、特定の果物(例 リンゴ)を茶色くし、海老に黒い点を発生させ(メラニン沈着)、ペルオキシダーゼ(Peroxidase)とリパーゼは脂質と酸素の化学反応で悪臭を発生させます。
6.食品内の微生物
細菌を減らす工程(例 洗浄、加熱、放射)を通過した後に残った食品内の前駆体微生物の種類と量は食品の劣化に影響を与えます。前駆体細菌の多い食品は(混入や生産場所の清掃が不十分、細菌が生存しやすい構成要素が食品内にある、細菌の量を減らす工程が不適切に行われたなどという原因より発生する可能性があります。)、法律で規定されている数量を超えた微生物の成長を発生させる可能性を高め、消費者にとって安全なものではなくなります。または、食品内の微生物が構成要素を生成し、微生物が生成した酸による異常な酸味、異臭、色の異常、菌の網目構造など食品の品質に影響を与えることとなります。
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