ITO Thailand Hygiene Blog
ハイパースペクトルイメージング技術
現在では、市場における食肉の価値の指標にするためや消費において格付けするため、消費者のニーズに応えるだけでなく、消費者へのアドバイスを行うために柔らかさの格付けが行われています。以下がその例になります。
1.米国農務省(U.S. Department of Agriculture; USDA) :柔らかい順にUSDA Prime、USDA Choice、USDA Selectの3つのレベルを設けています。(1)
2.日本ビーフ・マーブリング・スタンダード (Japanese Beef Marbling Score; BMS):脂肪が全くなく柔らかさのレベルが最も低い1から霜降りが最も多く最も柔らかいとされる12までレベル分けされています。また、レベル8-12のものについてはA5というグループに入れられます。(2)
3.ミート・スタンダード・オーストラリア(Meat Standard Australia; MSA) :肉に脂肪がないものを100点とし最も脂肪が多いものを1190点としています。また、柔らかさ以外にも色や脂肪層の深さ、枝肉の重量、完璧度などという他の観点からも格付けが行われています。(2)
従来の食肉の柔らかさの測定方法では、刃を有する測定計 (3) を用いた肉の切断試験の破断強度により測定されますが、分析に時間がかかる上サンプル肉の準備が必要でその肉も無駄になるため、さほど勝手の良いものではありませんでした。そのために、肉の柔らかさを予測し分析するハイパースペクトルイメージング技術が発達しました。今日はこの方法がどんなものなのか、どれほど肉の柔らかさの正確な分析が可能であるのか、どれだけ分析にかかる時間が短くなったか、現在の方法を代替肉産業に用いることはできるかどうか、についてみていきたいと思います。
ハイパースペクトルイメージングとは、構造状態を分析するもので、肉の表面の状態を2次元イメージでみることができ、生化学の状態は3次元イメージでみることが可能です。これらをビデオ映像と合わせて分析することで、サンプル食肉において分析対象の構成要素の位置情報を示すことが可能となります。これによりハイパースペクトルキューブまたはハイパーキューブと言われる3次元イメージが得られ、モデルの生成や適当な波長の選定が行われ (4)、得られた情報を元に各種化学的構成要素の分析が行われます。
また、柔らかさは筋肉の性質であるため(脂肪には柔らかさの指標はなし。)食肉の脂肪量とこの方法の測定の正確性に関する研究が行われました。³ハイパースペクトルイメージング技術の正確性を比較するために75%、50%、25%、0%の量での脂肪断絶試験が行われ、その結果脂肪は食肉の柔らかさ予測の正確性には影響がないことが分かりました。従って、本方法は効率的で正確性が高く、たったの数秒で食肉の柔らかさを予測することができる、とまとめることができます。
どんな方法にもメリットとデメリットがあることでしょう。ハイパースペクトルイメージング技術においても、コストが高く、また複雑な原理があるため生産部の従業員に対して研修を実施しよく理解してもらう必要があるというデメリットがあります。いずれにしても、この技術は食品産業にとって新しいテクノロジーとされているため更なる発展が可能であることでしょう。現在では機器の価格が下がってきた傾向にあるので、中小企業におかれても、大企業に引けを取らずに効率性があり基準に即した安全性のある食品生産を行うことを助長するテクノロジーを使用する機会となるでしょう。
食品工場での活用法の例は以下になります。
1.生産部における混入物の検出 例)カビやプラスチックが混入した原料。(5)
2.食品の容器の穴や破れ傷の検出 (5) 破れ傷のある容器は、食品の品質を劣化させる、腐らせる、または消費者の健康に害を与える病気を発生させる可能性のある微生物の侵入口となってしまうためです。
食品の品質評価に用いられる他に、生産ラインにおける混入物の検出や全ての産業において他面で活用することもできます。例えば、農家における農場の作物の成長や健康状態のモニター、オーストラリアにおけるブドウの成長のモニターや感染症警告システムの発展⁶、地質学者による大気写真からのミネラルの特定、地表下の原油量の検出、管からの天然ガス漏れの検出、また、医療においては生化学的構成要素の分析による身体の各種血管の働きのモニターなどが挙げられます。
ITO(THAILAND)LTD.社は食品生産者と合同して、安全な食品社会のために、消費者の幸せのために、心配することなく安全に食事をとっていただくためにテクノロジーの発展に邁進します。また、食品工場における衛生改善施策について助言させていただき、プロフェッショナルに従業員を研修いたします。アフターサービスも対応しておりますので網羅されたサービスの提供が可能です。
References
1.Mindy Ward. Beef quality grades explained [Internet]. 2021 [cited 13 Mar 2022]. Available from https://www.beefmagazine.com/beef-quality/beef-quality-grades-explained
2.Meat N’ Bone. Beef Grading 201: How the world grades beef [Internet] 2018 [cited 13 Mar 2022]. Available from https://meatnbone.com/blogs/the-clever-cleaver/meat-beef-grading-system-understanding
3.Cluff, K., G. K. Naganathan, J. Subbiah, A. Samal and C.R. Calkins. 2013. Optical scattering with hyperspectral imaging to classify longissimus dorsi muscle based on beef tenderness using multivariate modeling. Meat Science. 95: 42-50.
4.Barbin, D. F., G. ElMasry, D. Sun and P. Allen. 2012. Predicting quality and sensory attributes of pork using near-infrared hyperspectral imaging. Analytica Chimia Acta. 719: 30-42.
5.Vincent Markiet. Benefits of Hyperspectral Imaging for Food Quality Assurance [Internet]. 2021 [cited 13 Mar 2022]. Available from https://www.advian.fi/en/blog/benefits-of-hyperspectral-imaging-for-food-quality-assurance
6.Lorente, D., N. Aleixos, J. Gómez-Sanchis, S. Cubero, O. L. García-Navarrete and J. Blasco. 2012. Recent Advances and Applications of Hyperspectral Imaging for Fruit and Vegetable Quality Assessment. Food and Bioprocess Technology. 5 (4): 1121-1142.
Related Post
-
生分解性パッケージ
生分解性パッケージとは、その名の通り、自然に分解されるパッケージを意味します。近年、生分解性パッケージは、複数の組織で持続可能な開発目標の1つとして盛り込まれています。似たような問題で、持続可能な生活のための選択肢であるバイオプラスチックについては、以前のブログで取り上げたことがありますが、両者にはいくつかの違いがあります。例えば、バイオプラスチックは、再生可能な天然資源から調達した原料から作られ、生分解性である可能性もそうでない可能性もある一方で、生分解性プラスチックは、どのような原料から作られたものであっても、生物を通して自然に分解されます。今回のブログでは、生分解性パッケージの開発経緯、使用頻度の高い素材、生分解性パッケージのメリットとデメリット、今後のトレンドについて考察します。
-
精密農業
精密農業は、特定の要件を満たすために投入物を最適化することで、作物管理への取り組み方に革命をもたらしています。新しいシステムではないものの、最近の技術により、実用的な生産に応用することができるようになりました。今回は、精密農業の定義、そのメリットとデメリット、そして今後のトレンドについて考察します。
-
垂直農法
農業は、利用可能な土地のほとんどを利用しており、地球上に土地を見つけることが難しくなってきています。限られた資源で世界の食料需要を満たすには、より革新的で信頼性の高い方法で安全な食料を生産することが必要ですが、その答えは垂直農法にあります。
-
インテリジェントパッケージ
パッケージのない食品には、日持ちが悪い、物流管理ができない、サプライチェーンシステムが難しい、品質劣化が早い、危険な食中毒菌に汚染されやすいなどの問題が発生します。実際、パッケージが食品に貢献している機能は他にもたくさんあり、スマートパッケージにも多くの種類があります。インテリジェントパッケージは、スマートパッケージの一部と考えられていますので、今回のブログでは、インテリジェントパッケージの食品への貢献についてご紹介します。
-
Robots & automations in food industry
食品産業ロボットとオートメーションによる新時代の食品産業へ
-
食品産業におけるナノテクノロジー
ナノテクノロジーは過去数十年にわたって注目を集めてきており、食品業界にさまざまな有益な用途を提供してきました。他の技術とは異なり、ナノテクノロジーは食品業界の知識をナノスケール次元の別のレベルに広げました。食品包装、食品加工、機能性食品の開発、食品の安全性の向上など、食品産業のほぼすべての側面に関与しています。このブログでは、ナノテクノロジーが食品包装や食料品にどのように使用されているか、そして最も重要な部分であるその安全性の問題について説明します。