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オーガニック食品
オーガニック食品とは、植物性、動物性、豆、牛乳、卵などから作られ、農薬や化学肥料などを使用せずに生産され、遺伝子組み換え(Genetically modified organisms; GMO)が行われていない食品のことです。通常オーガニック食品は100%化学品が含まれていないとは限らず、一般的な商品と比べればごく少量の化学品や農薬[1]が残っている場合があります。よくみられる化合物としては以下が挙げられます。
1.ピレトリン[2] 蚊や蝿を駆除する除虫菊の花の抽出物で、人間にとって危険な物質ではなく軽度の炎症を引き起こす程度です。有機農業での使用が承認されています。
2.オイル[3] 安全に消費することができるので、殺虫剤や殺菌剤の代用品としてよく用いられます。
3.硫酸銅[4] 殺菌剤の代用品としてよく用いられます。米国農務省(United States Department of Agriculture; USDA)の承認を受けていますが、多量に使用すると皮膚や目の炎症など、人体へ害を引き起こす可能性があります。
オーガニック食品の消費者は、非オーガニック食品と同量の栄養素、ビタミン、ミネラルを摂取することとなりますが、合成化学物質や農薬の汚染がより少ないため、長期的に見て身体への望まない物質の蓄積を削減できます。また、オーガニック食品は環境への影響も少ないです。生産には再生可能エネルギーが用いられ、家畜は開かれた場所で飼育され、成長ホルモンやステロイド、抗生物質などは投与されません。
オーガニック食品の国際的認証
消費者が安心して各国の決まりを遵守したオーガニック食品を購入できるようにするために、オーガニック製品の基準が設けられています。例えば以下のような、包装に表示されるマークが挙げられます。
1.米国のUSDA Organic [5] オーガニック製品を植物、動物、加工品、森林植物に分類し、包装に表示されるマークは有機成分の割合によって以下の四種類に分けられます。100%オーガニック、オーガニック、オーガニック__生産商品、特定のオーガニック成分リスト
2.オーストラリアのAustralian Certified Organic Standard (ACOS) [6] 米国と類似したオーガニック成分構成比率の基準が設けられています。更にACOSは欧州連合からの承認も受けています。
3.欧州連合のThe Organic Logo [7] 緑色の背景に星が葉の形に並んでいるロゴです。欧州連合内での販売用に生産、流通、包装されたオーガニック商品、または欧州連合の基準に従い輸入されたオーガニック商品などがありますが、このロゴを使用するためには少なくとも95%の有機成分が含まれている必要があります。
タイの食品産業とオーガニック食品の関連性
昨今、オーガニック食品業界が非常に大きな市場価値を有することは否定することができないでしょう。カシコンリサーチセンターの情報(2018年8月)[8]によれば、オーガニック食品の市場価値は2,700 – 2,900百万バーツにも上るとされており、消費者の健康志向が高まっていることや、各国政府によるサステイナブルな農業及び畜産の支援により更に成長することが見込まれています。
更には、毎年開催されているアジア太平洋地域で最大の食品及び飲料の展示会である “THAIFEX – Anuga Asia”では、40ヶ国から2千5百以上の出展者が集い5日間で6万人以上の人が参加しています。展示会にはオーガニックマーケットのコーナーがあり、消費者がこの市場に興味を示していることが分かるでしょう。この地域におけるオーガニック製品の需要は2025年までに世界の収益の12%を占めると推定されています。[9]
しかしながら、オーガニック食品市場の成長を阻む大きな障壁は、オーガニック食品が一般の製品の価格よりも高価であることです。生産コストや、徹底した品質管理のコストが高いために、全ての消費者には手が届かないのです。
次なる重要なステップは、製品生産プロセス技術の開発や製品の品質保証体制の検討・改善、人件費削減のための自動化機械の使用です。また、政府の政策や関連機関の支援も事業者にプラスの影響を与え、オーガニック食品の販売価格を下げることができるようになり、消費者の手にとってもらいやすくなるでしょう。また、輸出向けのタイ製品の品質基準においても各国の規則に従うよう引き上げられることにつながるでしょう。
References
1.Better Health Channel. Organic food [Internet]. 2020 [Cited 18 Apr 2022]. Available from https://www.betterhealth.vic.gov.au/health/healthyliving/organic-food
2.Bond, C.; Buhl, K.; Stone, D. 2014. Pyrethrins General Fact Sheet; National Pesticide Information Center, Oregon State University Extension Services. http://npic.orst.edu/factsheets/pyrethrins.html
3.E. Bogran, Scott Ludwig and Bradley Metz. Using Oils As Pesticides [Internet]. 2022 [Cited 18 Apr 2022]. Available from https://agrilifeextension.tamu.edu/library/farming/using-oils-as-pesticides
4.Andrew Porterfield. Viewpoint: Organic fungicide copper sulfate and other copper products widely used by wine growers endangers humans, animals and insects [Internet]. 2020 [Cited 18 Apr 2022]. Available from https://geneticliteracyproject.org/2020/07/23/organic-fungicide-copper-sulfate-poses-dangers-to-humans-animals-insects-how-does-it-compare-to-conventional-pesticides
5.USDA Agricultural Marketing Service. About Organic Labeling [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://www.ams.usda.gov/rules-regulations/organic/labeling
6.Australian Organic. Australian Certified Organic Standard [Internet]. 2022 [Cited 19 April 2022]. Available from https://austorganic.com/industry/certification-and-standards/standards/acos
7.European Commission. The organic logo [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://ec.europa.eu/info/food-farming-fisheries/farming/organic-farming/organic-logo_en
8.K SME Analysis. ตลาดออร์แกนิค ธุรกิจสร้างเงิน SME ไทย [Internet]. 2018 [Cited 18 Apr 2022]. Available from https://www.kasikornbank.com/th/business/sme/KSMEKnowledge/article/KSMEAnalysis/Documents/Thai-SME_Organic-Product.pdf
9.THAIFEX-Anuga. THAIFEX – Anuga Organic Market [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://thaifex-anuga.com/en/event-highlights/thaifex-anuga-organic-market
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