ITO Thailand Hygiene Blog

Jul 04 2022

原材料の管理(青果製品)

汚染リスクの例

            汚染は、適切な対応が行われなければいつでも発生する可能性があります。最も明瞭な例は、土壌汚染でしょう。例えば、川岸で栽培される植物が、河川に破棄された化学物質によって汚染される可能性が挙げられ、人間や動物の汚物からの大腸菌の汚染や糞からの厩肥による汚染などが見つかることがあります。

            2021年12月のニュースリリースによると、デンマークにて重度の下痢を患っている68人の患者が発見され[1]、後にうち3人[2]が死亡したという報告がありました。調査の結果、患者たちはエジプトから輸入されたネギの入ったサラダを食べていたことが判明し、大腸菌O136:H7とO96:H19及び食中毒や赤痢を引き起こす赤痢菌[3]に汚染されていたことが明らかとなりました。また、汚染のもう一つの例として、2022年2月にメキシコにて、2021年5月から12月の間にサルモネラ菌に汚染された玉ねぎを消費したことが原因である症例が1,000件以上報告されています。[4]幸い死亡者はおりませんでしたが、食品がサルモネラ菌に汚染されたとしても外観や匂い、味が通常のものと変わらないため非常に危険であると言えます。

             私たちは様々な汚染リスクを簡単に減らすことができます。例えば、良好な衛生状態を維持することや加熱された食品を食べること、調理後すぐまたは4時間以内に食べることなどが挙げられます。私たちが食べる食品のほとんどは摂氏5~60度の安全温度範囲[5]外であるため、病原微生物が成長・増殖してしまうのです。

事業者の視点からの汚染の防止

            事業者及び加工者として、消費者の安全というのは大きな責務でしょう。以下の、原材料の品質及び安全管理システムは、目を背けることのできない最も重要な責務の一つです。

            トレーサビリティとは、原材料の生産から加工、流通、添加物、成分、包装のあらゆる段階までさかのぼり検証することができることを意味しますが、これは汚染が発生した際に生産ロットごとリコールを行うためのものです。例えば、デンマークでの大腸菌に汚染されたネギ、メキシコでのサルモネラ菌に汚染された玉ねぎが挙げられます。消費者の利益と健康のために、通常トレーサビリティには生産者名と住所、生産日と生産ロットなどの情報が含まれています。[6]

            昨今は、サプライチェーンの管理や食品テロ防止、食品の安全性や品質を保持するためにトレーサビリティ技術が用いられています。例えば、オーストラリアのスーパーマーケットWoolworthsは、農家や代理店、官公機関と提携しIoTブロックチェーン技術やデータ分析システム、品質検査センサーを用いて、製品が現在サプライチェーンにおけるどの段階にあるかをリアルタイムで確認しています。また、山火事や洪水などの災害が発生した際には、どの植物や野菜が損傷の危険にさらされているかを直ちに把握し、入手した情報に基づいて解決策を検討することが可能です。[7]これらから、トレーサビリティが生産者、流通業者、消費者、全ての関係者にとって非常に有益であることがお分かりいただけたでしょう。

消費者として製品寿命を延ばすための選択購入と保管

            野菜や果物を購入する際の簡単な原則は以下の通りです。

1.適切な店舗からの購入 例えば、野菜や果物だけを取り扱うお店は様々な製品を取り扱うお店よりも品質検査基準が高いと言えます。

2.外観の確認 異常があるかどうか、打撲傷がないこと、色が均一であること、不快な臭いがないことを確認します。値引きが行われているお店より購入する場合は特に注意が必要です。打撲傷はバクテリアの侵入口となり、野菜や果物を腐らせたり、寿命を短くしたりします。このような製品は品質が低いため保管期間も短くなるのです。

3.適切な保存 野菜や果物の種類によって適切な保管環境や温度の条件が異なります。例えば、りんごやオレンジ、パッションフルーツ、アボカドなどの低温群(摂氏2~6度)の野菜と果物と、高温群(摂氏13度以上)の野菜と果物がありますが、適切な温度下で保存された場合は品質の低下が遅くなりますが極端に低温で保存した場合には冷害と呼ばれる損傷が発生し、野菜と果物の色が濃くなり、表面に傷ができるなど状態が変化してしまいます。[8][9]また、野菜や果物の熟成を促進する植物ホルモンであるエチレンガスも挙げられます。トマトやバナナ、りんご、野菜や果物は自然にエチレンガスを放出しますが、熟した果物を未だ熟していないものと一緒に保存した場合、熟成を加速させてしまうため、未だ熟していない果物の保管期間が短くなります。[10]

            野菜と果物の適切な管理は品質と安全性に直接的に影響を与え、私たちが無視することのできないディテールがあります。品質の良い原材料は、高品質で栄養価が高く消費者にとって安全な食べ物を作る原料となるため、私たちは原材料の管理と保管に注目するべきなのです。

Reference

1.foodsafetynews.com/2021/12/spring-onions-from-egypt-suspected-in-danish-e-coli-outbreak

2.Joe Whitworth. Three people died in Danish E. coli outbreak; dozens more infected [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://www.foodsafetynews.com/2022/03/three-people-died-in-danish-e-coli-outbreak-dozens-more-infected

3.National Food Institute. Shigella [Internet]. 2015 [Cited 19 Apr 2022]. Available from http://fic.nfi.or.th/foodsafety/upload/damage/pdf/Shigella.pdf

4.Coral Beach. Onion outbreak is over but FDA continues investigation; more than 1,000 sickened [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://www.foodsafetynews.com/2022/02/onion-outbreak-is-over-but-fda-continues-investigation-more-than-1000-sickened/

5.Food Standards Australia New Zealand. Temperature Control [Internet]. 2022 [Cited 19 Apr 2022]. Available from https://www.foodstandards.gov.au/consumer/safety/faqsafety/pages/foodsafetyfactsheets/charitiesandcommunityorganisationsfactsheets/temperaturecontrolma1477.aspx

6.Food Standards Australia New Zealand. Food Traceability [Internet]. 2017 [Cited 20 Apr 2022]. Available from https://www.foodstandards.gov.au/industry/safetystandards/traceability/pages/default.aspx#:~:text=Traceability%20is%20the%20ability%20to,point%20in%20the%20supply%20chain.

7.Good Fruit & Vegetables. Traceability technology tested for produce tracing system in natural disaster scenarios [Internet]. 2022 [Cited 20 Apr 2022]. Available from https://www.goodfruitandvegetables.com.au/story/7555208/trial-tests-produce-tracing-system

8.Department of Agriculture and Fisheries, Queensland Government. Recommended storage temperatures for fresh produce [Internet]. 2022 [Cited 20 Apr 2022]. Available from https://www.publications.qld.gov.au/dataset/b79225ec-0136-4eb3-b4a3-8e0bc221e725/resource/df0df8ce-f668-4ecf-a4f0-d1b3f4a4ea20/download/storage-temperatures.pdf

9.Pest and Disease Information Service (PaDIS), Government of Western Australia. Storage of fresh fruit and vegetables [Internet]. 2016 [Cited 20 Apr 2022]. Available from https://www.agric.wa.gov.au/fruit/storage-fresh-fruit-and-vegetables

10.Chang, C. Q&A: How do plants respond to ethylene and what is its importance?. BMC Biol 14, 7 (2016). https://doi.org/10.1186/s12915-016-0230-0

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