ITO Thailand Hygiene Blog

Aug 01 2022

Food Security

食料安全保障の4要素

            食料安全保障の有効性を実現するためには、以下の4要素を同時に満たさなければなりません(FAO, 2008; Australian Centre for International Agricultural Research, 2014)。

            1.物理面: 需要に対して十分な食料の量、ならびに、食料の品質及び多様性を定めた良い食料生産システム、資源管理。

            2.入手可能性: 誰もが平等に栄養価のある食料を入手できるようにするための政府による経済政策の規定、市場商品価格の管理、商品価格のメカニズム。

            3.利用面: 身体に十分なエネルギーと栄養をもたらすための多様性ある良い食料調達の管理・監視、及び、食料の流通が行き届いていること。 

            4.安定性: 自然災害、政治的・経済的状況等、食料安全保障に影響を及ぼす外部要因があった場合でも、長期にわたって上記の3要素の安定性が維持できること。

世界の食料安全保障と栄養状態の現状

            2020年、全世界で食料安全保障の影響を受けた人は7億2,000万〜8億1,100万人に上ると推定されており、前年に比べ1億1,800万〜1億6,100万人も増加しています(FAO et al., 2021)。その主な原因はCovid-19 によるもので、短期的であるにもかかわらず、世界中の人の食料入手が困難になるという影響をもたらしています。国連食糧農業機関(FAO)によると、栄養失調の人の多くはアジア及びアフリカの貧困国の人となっています(2021)。主な原因は、ロックダウン、そして、市場やスーパーマーケットの営業時間短縮、食品価格の高騰といった食料調達源によるものです。また、その他の原因として、経済状況に伴って家庭の収入が減少して消費者行動が変化し、価格が安い長持ちする加工食品を多く購入するようになってしまい、それらの栄養価が低いことや、毎回の食事の量が減ったこと、多様性が減ったこと、社会的活動に制限があること等もあります(FAO et al., 2021)。

主要な要因

            食料安全保障の問題を引き起こしている主要な要因には、次の3要因があります(FAO et al., 2021)。すなわち、

            1) 洪水、旱ばつ、地球温暖化といった異常気象により、農業、農産物への被害等があること 

            2) 経済不況の問題により、家庭の消費者の購買力が低下していること 

            3) 国内における対立問題及び国際社会レベルの暴力となります。たとえば、ロシアのウクライナ侵攻(Murphy, 2022)では、世界の食料品価格が高騰し、貧困国の食料入手可能性が困難なものになっています。ロシア及びウクライナで生産されている小麦量は、世界全体の小麦量の30%に及びます(Simpson, 2022)。また、ロシアは、塩化カリウムやリン等の肥料生産にとって重要な原料の他、窒素肥料の原料であるアンモニアの生産に必要な天然ガスの生産・輸出国でもあるのです(Simpson, 2022)。

持続的な問題解決

            全世界の農産物を改善するためには、農業分野の研究開発が重要になってくるといいます(Australian Centre for International Agricultural Research, 2014)。それにより貧困国の人々の生活が向上し、食料の入手可能性が高まり、食料安全保障が向上します。しかしながら、各国でそれぞれ問題解決の方法を適用していく必要もあり、具体的な問題解決のための提案が様々になされています。列挙すると、たとえば、人道的政策、暴力の影響を受けている地域での平和の実現、持続可能な食料生産システムを維持・管理するための環境・気候関連の政策、自然環境の再生、社会における全ての人を平等に保護するための経済政策及び法令、家庭収入増強のための支援、労働市場の支援、栄養価の高い食品のコスト低減のための食品サプライチェーン(Food supply chain)改善の政策、構造管理及び貧困対策の政策、健康のための消費者行動改革の政策等があります(FAO et al., 2021)。

            これらの政策を見てお分かりかと思いますが、目的は、誰もが栄養価の高い食料を平等に入手できるようにすること、持続可能な健康を手に入れられるようにすることです。影響は一国の中だけに留まるものではなく、世界中の人々に及ぶのです。ですから、食料安全保障のことを遠いどこかの問題と考えるのではなく、私たちが持続可能な問題解決をしていかなければなりません。ITO Thailandでは、消費者にとって安全な食品が安定的に入手できる社会に貢献したいと望んでいます。

References

1.Australian Centre for International Agricultural Research. (2014, December 22). Food security and why it matters. Australian International Food Security Centre. https://aifsc.aciar.gov.au/food-security-and-why-it-matters.html

2.FAO. (2008). An Introduction to the Basic Concepts of Food Security. EC – FAO Food Security Programme. https://www.fao.org/3/al936e/al936e.pdf

3.FAO, IFAD, UNICEF, WFP and WHO. 2021. The State of Food Security and Nutrition in the World 2021. Transforming food systems for food security, improved nutrition and affordable healthy diets for all. Rome, FAO. https://doi.org/10.4060/cb4474en

4.Murphy, M. (2022, May 19). Ukraine invasion could cause global food crisis, UN warns. BBC News. https://www.bbc.com/news/world-europe-61503049

5.Simpson, E. (2022, March 7). Ukraine war “catastrophic for global food.” BBC News. https://www.bbc.com/news/business-60623941

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