ITO Thailand Hygiene Blog

Aug 08 2022

食品産業における有害生物防除

食品工場で見られる有害生物4群 (1,2)

飛ぶ虫 たとえば、ハエ、ショウジョウバエ、羽蟻、シロアリの羽蟻など。

            微生物の汚染があることがあり、食品を劣化させたり、病気を媒介したりします。たとえば、虫の体や脚に付着した病原菌や糞、食品に卵を産みつけたりすることにより発生する赤痢、腸チフス、コレラ、十二指腸虫、回虫があります。また、体の一部(羽、脚など)が製品に混入することもあります。

這う虫 たとえば、ゴキブリ、蟻、芋虫、蜘蛛など。

            最も多く見られるのがゴキブリと蟻で、体の一部や、卵、糞が食品に混入する可能性があります。原材料を食べてしまったり、不快な臭いを発したり、病原菌や微生物の汚染により食品を劣化させたりすることもあります。蜘蛛の場合は、巣に埃や他の虫が付くため、それらが食品に混入する可能性があります。

翼のある動物 たとえば、鳥。

            鳥の糞は酸性のため、設備の表面を腐食させることがあり、滑る危険もあります。また、病原菌や寄生虫、カビの汚染となることもあります。中でも特に、鳩による脳炎、鳥類が持つサルモネラ菌は重大です。実際、食品の原材料に鳥の糞が混入したことにより、サルモネラ感染症が蔓延したという報告があります(3) 。また、物理的に、鳥の死骸、鳥の羽毛、鳥の巣の一部が製品に混入することもあります。食品を劣化させる微生物が混入することもありますし、ハエやゴキブリ等の他の有害生物を持ち込むこともあります。鳴き声もうるさいです。

哺乳類 たとえば、犬、猫、ネズミなど。

            犬や猫は、食品屑に引き寄せられて敷地内に入ってくることがありますが、糞尿をしたり、毛が食品に混入したり、虫(ダニやノミ等)を媒介して微生物が食品に混入したりします。また、狂犬病や猫による寄生虫病、アレルギーなど、従業員に病気をもたらすこともあります。

            ネズミもよく見られる有害生物ですが、理由として、小型で泳ぐことができ、小さな穴に潜り込んだり隠れたりもでき、繁殖が早いことが挙げられます。原材料や用具はほとんどどんなものでもかじりますし、電気ケーブルもかじります。様々な病原菌を媒介し、毛、糞、虫、それに死骸も汚染源となります。

有害生物防除の3つのテクニック

外部からの生物侵入の低減

            -生物の餌となる発生源の衛生管理をします。たとえば、原材料を密封して保管する、ゴミを密閉して適切に管理する、製造エリアから遠い場所に捨てるなどです。従業員の食事による食品屑も含まれます。排水管の管理をし、トイレを清潔にしておきます。

            -製造工程について、ハエやショウジョウバエの好む匂いの漬け込み工程等、生物を引き寄せる匂いのする工程がある場合は、適切な排気管理を行います。防虫フィルターを付けてもいいですし、スケジュール表を作って常に排気口の清掃をしておくこともできます。

            -虫を引き寄せる花や、鳥が巣を作る樹木や建物の日よけを製造棟から離しておく等、有害生物を引き寄せる環境を管理します。または、防鳥ネット、防虫ネット等の用品を使用します。

            -製造ラインの清掃に配慮し、食品屑が有害生物を引き寄せる可能性を低減します。

            -一部の種類の虫は夜間の光に引き寄せられるので、照明の設置には注意をしなければなりません。または、水銀灯の代わりにナトリウム灯を使用すると、白色の明るい光ではなく暖色になるため、虫を引き寄せにくくなります。建物から離れたところに街灯を設置してもよいです (2)

出入口付近のリスク低減

            -排水管や亀裂、ヒビ、窓など生物が出入りする可能性のある箇所を確認し、適切な管理をします。たとえば、排水管に防虫トラップを設置する、網戸やネットを設置する、ネズミにかじられる恐れのある扉枠にカバーを付ける、所定の頻度で建物の保守管理をする等となります。

            -従業員の出入口付近については、開放する隙間と時間を最小限に抑え、外部から虫などの有害生物が侵入するリスクを低減しなければなりません。これについては、たとえば、ストリップ型ドアカーテンを設置する、自動扉とする、エアーカーテンを使用する、高速シートシャッターを使用する等ができます。

            -色の原理で虫を遠ざけたり引き寄せたりします。たとえば、日本の「防虫マジックオプトロン」は、虫の目に見えない波長の色を外側に使用し、虫を引き寄せないようにすると同時に、内側に虫を引き寄せる色を使用し、うっかり入り込んでしまった虫を扉付近に引き寄せるというシート技術で特許権登録をしています。これについては、化学物質を使用することなく7%の防虫ができるという試験結果が出ています。

            -靴の履き替えを行い、粘着マットや長靴洗浄装置など、靴底を消毒するための用品を使用します。また、製造エリアを出入りする台車やフォークリフトのタイヤも清掃し、虫や虫の死骸、動物の糞、汚れが製造エリアに運ばれたり、有害生物を引き寄せる可能性のある血や油脂等の食品汚れが製造エリア全体に拡散したりするリスクを低減します。

製造エリアに侵入してしまった生物の駆除

            -生物の汚染のある原材料は、燻蒸による蛾の駆除、マイクロ波の使用など特別な管理をする必要があります(4) 。

            -巣穴、糞、かじった跡、毛や死骸などの痕跡を定期的に検査します。

            -捕獲器を設置します。たとえば、光誘引捕虫器、ネズミ捕獲装置、その他の捕獲装置等。これらの捕獲装置を使用する場合、化学物質の食品混入リスクを勘案しなければならず、また、死骸が食品に混入しないよう管理しなければなりません。

References

1.病原媒介生物管理 [online] http://www.facagri.cmru.ac.th/2013/wp-content/uploads/2013/03/%E0%B8%9A%E0%B8%97%E0%B8%97%E0%B8%B5%E0%B9%885-%E0%B8%AA%E0%B8%B1%E0%B8%95%E0%B8%A7%E0%B9%8C%E0%B8%9E%E0%B8%B2%E0%B8%AB%E0%B8%B0.pdf

2.Australian Environmental Pest Managers Association and the Pest Management Association of New Zealand. 2014. A Code of Practice for Pest Management in the Food Industry in Australia & New Zealand (2nd edition)

3.https://foodpoisoningbulletin.com/2012/salmonella-outbreak-bird-poop-on-peanuts-at-sunland-plant/

4.プーンパン・プーンノーイ、ベンナティップ・マハーテープ、ピンナーパット・プッターン(2010)『有機米における蛾の卵のマイクロ波による駆除』キングモンクット工科大学トンブリー校研究開発誌第33年第1号(2010年1〜3月)、39〜48 

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