ITO Thailand Hygiene Blog

Aug 15 2022

AI technology in Food industry world

食中毒(Food outbreak cases)

            食品の安全と汚染の問題は、現在でもしばしば発生しています。疾病管理局疫学課の最新の統計 (1)によると、2021年の食中毒患者数は55,649人で、うち1人が死亡しています。また、2022年1〜3月の累計患者数は13,213人となっています。近年の目立ったケースとしては、2022年初、東部でノロウイルス (2)の汚染により発生した集団食中毒があります。また、2022年7月には、葬式で弁当を食べた250人余が食中毒にかかるというニュースがありました(3) 。外国の報道でも同じ問題が見られ、たとえば日本(4) では、2020年に山口県の飲食店や栃木県のラーメン店で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の汚染が発見されています。こうした危険な汚染は、飲食店だけでなく、食品中に発生することもあります。2022年の上半期だけでも、アメリカ食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration: USFDA)による米国内でのピーナッツバターのリコール (5)、英国食品基準庁(Food Standards Agency: FSA)による欧州諸国でのチョコレート製品のリコール(6) など、製品リコールのニュースは全世界で大きく報じられています。両ケースはサルモネラ菌(Salmonella)の汚染と思われるものだったため、中国の関税事務局(GAC)、オマーンの保健省、及びサウジアラビアの食品医薬品庁では、米国の工場で作られた乳児用粉ミルクに関し、死者が発生して製品リコールに至ったバクテリアの汚染可能性があると注意を呼びかける事態となりました(7) 。こうしたニュースにより、消費者に危険をもたらす食品安全の問題が浮き彫りになっただけでなく、補償、製品リコール、さらには訴訟や工場閉鎖の可能性といった食品製造業者の損害についても明らかになりました。なお、米国の粉ミルク工場の汚染では、2022年2月より汚染を発生させた支社工場が検査のために閉鎖され、2022年6月には米国内で粉ミルクが不足するという問題に発展しています(8) 。

            このように食品安全の問題は非常に重要です。これは、消費者すなわち国民の健康にリスクを及ぼすものです。したがって、それぞれの国家で食品安全を実現するため、製造衛生や輸入食品に関する基準が策定されなければなりません。タイ国の法律についても、製造衛生に関する基準を適用する必要があり、また、検査に合格しなければ食品製造工場や事業所が設置できないようにする必要があります。輸出については、輸出先の顧客によって異なる基準が適用されたり必要とされたりすることになります。

基準の引上げとHACCPの導入

            一般に、タイ国内で食品製造業を営むためには、2020年保健省告示(第420号)に基づく製造工具・用具の製造及び食品保管の方法に関する基準を満たす必要があります。この基準はGMP420と呼ばれることが多いですが、製造場所、ツール・備品、製造工程管理、衛生、及び個人衛生についてしか定められていません。しかし、コーデックス(Codex)の国際的なGMPでは、現在GHPの名称を使用し、適用範囲が製造工程だけでなく、サプライチェーン全体に改訂されている他、データ(アレルゲン等)や説明の更新がされています。このGHP Codexは、CXC 1-1969 Rev.2020 General Principle of Food Hygiene :GHPs and HACCP Systemという基準の一部であり、食品の危害分析・重要管理点システム(Hazard Analysis and Critical Control Point: HACCP)についても言及されています。最新版は2020年に施行されていますが、第1章は適正衛生規範(Good hygiene practices)、第2章はHACCPに関して述べられています。したがって、タイ国法に基づくGMP420基準をGHP Codex基準に引き上げるためには、まず、HACCPの規格を増やさなければなりません。基準の引上げは、消費者や顧客の信頼を得ることになるだけでなく、原材料、労働力、時間といった製造工程における価値ある資産の損失防止にもなります。さらに、製造工程内のミスにより発生するゴミも削減することができるのです。

HACCPとは?

            HACCPすなわち危害分析・重要管理点システムとは、食品製造についていえば、主に、消費者に影響を及ぼす食品製造による危害を防止するものです。現在(Revision 2020(9) )では、危害は4種類に分類されています。列挙すると、物理的危害(金属屑、ガラス屑、異物の汚染等)、化学的危害(洗剤、潤滑剤、汚染化学物質、所定の量を超える食品添加物、原材料中の抗生物質等)、生物学的危害(病原バクテリア又は毒素を生成するバクテリアの二次汚染等)、及び、アレルゲンによる危害となります。HACCPの概要は、次の図に示す7原則12手順の構成となります。

            HACCP計画をより有効に使用するためには、この12手順を定めるだけでなく、関連する人材への教育・訓練の設計も必要となります。

手洗いの大切さ(Importance of hand washing)

             食品汚染の原因となる重要管理点の一つは、調理をしたり食品製造工程に関与したりする従業員の手による汚染です。アメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)(10) の報告によると、食中毒(Food-borne illness)の実に34%が手の衛生問題に関連するものとなっています。また、適切な手洗いにより下痢を引き起こす病原体の蔓延を低減できた上、人体に一般に見られる正常細菌叢(せいじょうさいきんそう / normal flora)の数も54%低減できたというインドの生徒グループ(11) の研究も報告されています。食品製造及び食品関連事業所の分野でも、生食肉からインスタント食品への二次汚染に関する研究(12) があり、それによると、適切な手洗いで大腸菌(E. coli)による疾病の発生を34%も低減することができるそうです。さらに、食品に関連する疾病蔓延(outbreak)の原因に関する別の研究(13) では、病原菌の付着した従業員の素手が食品に接触することによるものが最も多く、次いで、手の衛生維持が不十分である、備品・用品の洗浄が不適切である等となっています。

            したがって、食品に接触する従業員の手の洗浄・消毒は、非常に重要なこととなります。また、管理ミスが起こりやすい弱点の一つでもあり、二次汚染が発生したり、食品製造工程にバクテリアや汚れを媒介したりするという意味で重要管理点となるので、衛生に対する配慮をしなければならず、手の洗浄・消毒をよく行うようにしなければなりません。たとえば、従業員研修により知識を与え、従業員に手洗いの大切さについての知識・理解と意識を持たせることもできます。また、規則やルールを定めたり、適切なツールでのサポートをしたりして、従業員が基準通りに手の洗浄・消毒をできるようにします。しかしながら、実際の現場では、たとえ研修をしていたとしても、日々、多くの従業員が製造ラインや厨房に出入りしますし、一日の間にも従業員は何度も出入りをするので、基準通りの正しい手洗いを怠ってしまうという問題もあります。忙しいですから、検査をしたり注意したりしてすぐ是正させるというのも困難です。さらに、研修には時間的な制約もあり、時間と予算の問題で頻繁には行えなかったりもしますから、新入社員が食品調理における衛生の大切さについての正しい情報を十分に得られていないこともあります。

ケーススタディー:手洗い基準管理のためのAI技術の使用

            前述のような問題から、従業員の行動を基準に従わせるため、AI技術(もっと読む)等、支援(assist)・管理(Control)の役割を担う技術が導入されるようになってきました。そこで、ITO (THAILAND)では、手洗い基準管理に関するケーススタディーから、日本のAI技術によって手洗い基準が管理できるアシスト製品を紹介させて頂きます。この技術は株式会社コンテック4,14によって開発されたもので、AI搭載3Dカメラによる処理を用いています。また、参考基準は、日本の厚生労働省が推奨する6手順の正しい手洗い方法を使用しています。試験結果では、手洗いの動作(石鹸のポンプを押す、消毒液のポンプを押す、手のこすり方、水洗い等)の検査の精度は95%を超えるものとなっています。

            この技術の長所は、モニタ上で評価がすぐ従業員にわかることです(real-time)。そのため、モニタ上に警告表示があれば、すぐに手の洗い方を改善することができます。また、ストップウォッチを別途使わなくても適正時間がわかるので、モニタリングシステムとして技術を導入し、危害管理の方策とすることができます。すなわち、ここでは、動作及び時間の両方について定められた基準に基づく手洗いと消毒による生物学的危害の防止、ということになります。これは実際の所要時間を評価するだけでなく、警告して洗い方を是正させ、即時に従業員が正しく洗えるようにするものです。さらに、データの記録・保存、統計作成ができるため監査の証拠とすることができ、たとえクレームが発生した場合でも、この重要管理点の危害防止の方策が通常通り実行されていたかどうか過去にさかのぼって確認すること(traceability)ができるので、疑問点に対して明確な説明をすることが可能です。管理計画の策定にデータを使用すれば効率化を図れる上、品質管理システムや入退社記録システム、MES(Manufacturing Execution System)等、組織の他のシステムにこの技術を連結することもできます。

デモをご覧ください。

 

            食品の持続可能な安全を実現するべく、ITO (THAILAND)では食品産業における技術開発の一助となれることを願っております。食品産業向けAI技術にご関心がありましたら、ご連絡下さいませ。すぐにシステム作成の相談に応じます。

References

1.Department of Disease Control. 2022. Food poisoning. online: https://ddc.moph.go.th/uploads/publish/1262720220412075734.pdf

2.2022. DDC investigates food poisoning cases in Chantaburi, finds virus contamination, warns consumers to be cautious about what they eat. online: https://www.matichon.co.th/local/quality-life/news_3113792

3.Matichon. Lunchboxes at funeral cause 250 food poisoning cases, hospital finds they are infected with Covid-19. online: https://news.trueid.net/detail/YEJzDbP8RyWE

4.2020. The Amendment to Japan’s Food Sanitation Act and Methods of Food Sanitation Management Utilizing AI Technology. online: https://www.contec.com/support/blog/2020/201028_health-ai/

5.2022. Outbreak Investigation of Salmonella: Peanut Butter (May 2022). online: https://www.fda.gov/food/outbreaks-foodborne-illness/outbreak-investigation-salmonella-peanut-butter-may-2022

6.Food Standards Agency. 2022. Update 3: Ferrero recalls in the UK products intended for European market. online: https://www.food.gov.uk/news-alerts/alert/fsa-prin-22-2022-update-3

7.2022. China warns consumers not to use Abbott baby formula affected by recall. online: https://www.reuters.com/world/china/china-warns-consumers-not-use-abbott-baby-formula-affected-by-recall-2022-02-21/?fbclid=IwAR2FvSIfCmid7_3DnO2a9ZAndFS2csQT2tsFAnJHAOwtetbKxNo3EFrLNs0

8.Khushi A. 2022. Abbott says it has reopened Michigan baby formula plant. online: https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/abbott-says-it-has-reopened-michigan-baby-formula-plant-2022-07-09/#:~:text=July%209%20(Reuters)%20%2D%20Abbott,producing%20specialty%20baby%20formula%20EleCare.

9.Codex Alimentarius. 2020. The General Principles of Food Hygiene (CXC 1 – 1969, Rev.5-2020). online: https://www.fao.org/fao-who-codexalimentarius/sh-proxy/en/?lnk=1&url=https%253A%252F%252Fworkspace.fao.org%252Fsites%252Fcodex%252FStandards%252FCXC%2B1-1969%252FCXC_001e.pdf

10.Craig B.S. nd. Information You Can Use Hand Washing Research. online: https://www.uidaho.edu/-/media/UIdaho-Responsive/Files/Extension/topic/germ-city/research-you-can-use.pdf

11.Tambekar, D. H., & Shirsat, S. D. (2009). Hand washing: a cornerstone to prevent the transmission of diarrhoeal infection. Asian J Med Sci1(3), 100-3.

12.Todd, E. C., Greig, J. D., Bartleson, C. A., & Michaels, B. S. (2009). Outbreaks where food workers have been implicated in the spread of foodborne disease. Part 6. Transmission and survival of pathogens in the food processing and preparation environment. Journal of food protection72(1), 202-219.

13.Todd, E. C., Greig, J. D., Bartleson, C. A., & Michaels, B. S. (2007). Outbreaks where food workers have been implicated in the spread of foodborne disease. Part 3. Factors contributing to outbreaks and description of outbreak categories. Journal of food protection70(9), 2199-2217.

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