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Aug 22 2022

食品安全 / 品質モニタリング技術

            食品が製造された後、保存可能期間を決めるのは品質(色、匂い、食感、味等)と安全性(病原微生物、毒性のある微生物等)です。同時に収穫されたり製造されたりした食品には、食品の性質毎に同一の保存可能期間が記載されますが、実際には、食品の内部で変化が生じます。これは、温度、湿度、光、酸素等、食品の保存環境によって異なります。したがって、同時に製造された食品でも、保存状態によって劣化の度合いは異なるのが事実です。これは製造工程内についてもいえることで、熱が均一に拡散していなければ、製造した時点で食品の品質に違いが生じてしまいます。ですから、品質モニタリングにおいては、一般に目視検査だけでなく抜き取り検査も行い、目視では分からない品質と安全性を分析します。つまり、酸アルカリ度、食感、粘り、火の通り加減等の検査サンプルにロスが生じています。また、微生物の培養等には時間もかかります。そこで、サンプルを処分することなく、リアルタイム方式で結果が分かる品質・安全性検査のための様々な技術開発の努力がなされています。

            •観察可能な外面の特性を品質に連関

              →たとえば、カラーイメージング技術では、表面や外皮の色を果物の品質と連関させます。また、ハイパースペクトルイメージング技術を用いれば、肉片の表面のスペクトルの測定から食肉の脂肪分布の性質も予測できます。

            •変色指示薬(Color indicator)

              →目視で確認できない食品品質の変化を目に見える形式で伝える場合、化学反応による色の変化や色素分布がよく用いられます。これには、以下のような様々な種類があります。

            •特定の物質を検査する指示薬

              →特定の物質に反応し、その物質に触れると所定の濃度に変色する試薬が含まれた試験紙です。試験紙を製品の容器内に貼り付けると容器のHead-spaceの物質が検出できますが、測定する特定の物質は気体でなければなりません。たとえば、鮮度インジケータは、食品中の酵素の劣化から発生するメタボライトや、外部の微生物の成長や野菜・果物の呼吸から発生する二酸化炭素、タンパク質の分解で発生する窒素系揮発物、緑膿菌群の微生物から発生する硫黄化合物を検出することにより、製品の鮮度を表示します(1) 。熟度インジケータは、果物が熟した匂いを発するアルデヒド系物質、放出されるエチレンガス等、野菜・果物が熟す時に放出される揮発性物質から野菜・果物の熟度を表示します(1) 。また、発酵インジケータはキムチ漬け工程における二酸化炭素の測定等ができ(2) 、漏洩インジケータは真空パックへの空気の流入が測定できます(3) 。

            •臨界温度インジケータ(Critical Temperature indicator)

              →冷凍食品など温度にセンシティブな製品に使用します。これは、反応し合うと色が付く無色の2種類の物質を使い、これらの間の仕切りの状態の変化を利用して検査するものです。製品の保存温度が変動し、所定の臨界温度を超えると、試験紙の仕切りが液体に変化し、両側の試薬が混ざって反応を起こし、色が付いて目に見えるようになります(4) 。

            •時間温度インジケータ(Time-temperature indicator)

              →食品の時間温度履歴(Time-temperature history)、すなわち、どれだけの温度にどれくらいの時間接触したか、食品の品質や安全性にどのような影響があるかを表示するもので、何段階かの色の変化で品質の違いを表します。これは、食品の劣化における反応と色の反応を比例させ、どちらも同じくらいの時間で起こるようにするもので、また温度によっても、食品中の反応と試験紙の変化とがほぼ比例して起こるようになっています。簡単な例でいえば、茹で卵の茹で上がり具合を見る場合、卵をこれから茹でる時に試験紙を同時に入れると、試験紙の色も茹で具合と連動して変化していく、というものです。産業上では、蒸し食品への火の通り具合 (5)、均一になりにくい加熱における水分蒸発の度合い(6) 、加熱殺菌7等、食品の品質・安全性に影響する温度変化 (7)に関連する製造工程、または、生鮮食品、冷蔵食品 、冷凍食品等、温度にセンシティブな食品の保管工程に使用することができます。

            •センサー及びモニタリングシステム(Smart monitoring system)

              →これまでは色の変化によって食品の品質や人体への安全性を示すものでしたが、技術の発展した現在では、センサーで食品の品質及び安全性に影響する要因のデータが収集できるようになっています。これには、温度、湿度、光、ガス等の測定センサーがあります。また、成分、pH、物質の濃度、構造、空隙構造等、品質や安全性の変化に影響する食品の性質上のデータも収集でき、これらのデータを用いて問題解決や開発を行うためのソフトウェアもできています。たとえば、食品サプライチェーン全体を通した食品の品質及び安全性の変化を予測することにより、ミスがあればすぐ現場に通知することが可能です。また、製造におけるボトルネックを見つけて作業工程を改善し、製品の品質不良の量を減らしたり、製品の実際の品質に基づき商品の在庫管理をしたり、データを連結させて製造効率を向上させたりでき、製品の生産や販売計画、機械・機器の設計・保守に役立てることもできます。

References

1.Shao, P., Liu, L., Yu, J., Lin, Y., Gao, H., Chen, H., & Sun, P. (2021). An overview of intelligent freshness indicator packaging for food quality and safety monitoring. Trends in Food Science & Technology, 118, 285-296.

2.Hong, S. I., & Park, W. S. (2000). Use of color indicators as an active packaging system for evaluating kimchi fermentation. Journal of Food Engineering, 46(1), 67-72.

3.Ahari, H., & Soufiani, S. P. (2021). Smart and Active Food Packaging: Insights in Novel Food Packaging. Frontiers in Microbiology, 12.

4.Boonsupthip, W., Heldman, D. R., & Choachamnan, J. (2015). Quality monitoring and management during storage and distribution of frozen vegetables. Handbook of vegetable preservation and processing, 349-376.

5.Choachamnan, J., & Boonsupthip, W. (2019). Glucose‐fructose‐glycine time–temperature integrator and its potential application in heating process control of food softness. Journal of Food Process Engineering, 42(8), e13287.

6.Uddin, Z., & Boonsupthip, W. (2019). Development and characterization of a new nonenzymatic colored time–temperature indicator. Journal of Food Process Engineering, 42(4), e13027.

7.Van Loey, A., Haentjens, T., Smout, C., & Hendrickx, M. (1999). Enzymic time–temperature integrators for the quantification of thermal processes in terms of food safety. Processing foods: quality optimization and process assessment, 13-40.

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