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Boot Cleaner
靴が食品工場にもたらす4つのリスク
• 重力のため
地球上の全ての物体は地球の重力により、地球の表面に吸い付けられています。靴は床に触れることが最も多いため、汚染のリスクも最も高くなります。汚染には、たとえば、土、埃、虫の死骸、動物の糞、汚物等、外部からのものがあります。また、畜産場からの動物の糞、食肉切断による血や脂、原材料の皮剥き・スライス・準備による食品滓、製造又は清掃による化学物質、原材料中のプロテインによるアレルゲン等、ある作業エリアと接触する可能性のある別の作業工程からの望まれない汚染もあります。これらは全て、物理的、化学的、微生物学的、そしてアレルゲンという面で食品に危険をもたらす可能性があるのです。
• 病原菌の溜まり場となる
靴は、汚れた物に接触するリスクが最も高いだけではありません。靴は従業員の足を入れるところですから、環境や従業員の足自体に存在する微生物の溜まり場となる恐れがあります。また、従業員の垢や汗は微生物の食べ物となってしまいます。これらの微生物の中には病原菌となったり、食品の腐敗を早めたりするものが混じっていることもあります。したがって、靴は、容易に洗って消毒することのできる適切な素材でできたものを使用しなければなりません (1)。
• 別の部屋への二次汚染
これまで述べてきた通り、靴による汚染のリスクは外部からもたされるものだけではなく、工場内の部屋と部屋、ゾーンとゾーンの間でも汚染の可能性があります。特に、靴に汚れが多く蓄積している場合、消毒をしても汚れに邪魔されて、全ての微生物を排除し切れず(清掃と消毒の項目参照)、汚染された靴が媒介となって遠くまで汚染を拡散させてしまうこともあります。濡れた床の場合、靴により汚染が47メートルも先に運ばれるという研究も報告されています(2,3) 。
• 従業員の安全
靴は、製品の安全だけでなく、従業員の安全にも大きな影響を及ぼします。したがって、靴は適切に設計しなければなりません。靴底は滑り止め機能のあるものとし、事故を防止します。また、作業環境(温度、化学物質、重い物、刃物等)から作業者を保護するために十分な特性がなければなりません。作業者が長時間立ち作業をしなければならないシステムの場合は特に、作業者の体重を適切に支える必要もあります(1) 。
食品工場における靴管理の3つの秘訣
• 外部からの靴の管理
保健省告示(第420号)(4) によると、作業において従業員は清潔な靴を着用しなければならないと定められています。実務上、靴を最も清潔にする管理とは、建物内のみで使用する靴に履き替えることです。ここで使用する靴は、作業の種類によって変わります。たとえば、濡れた場所では長靴、乾いた場所では踵のある靴などです (5)。素材は容易に洗って消毒することのできる適切なものでなければなりません。訪問者の場合は、一時的に靴カバーを使ってもらうなど、適宜行うことができます。また、建物内に入る時はステップマットを通るようにして靴底に付く埃を低減するなど、追加で他の対策をしてもよいでしょう。
• リスクに応じて上履きのゾーンを分ける
靴を上履きに履き替えるだけでなく、建物に入ってからも靴はエリア間の二次汚染の媒介となる可能性がありますので、食品産業の衛生基準に基づきリスクレベル(詳しくはこちらを参照)の異なるエリア毎に管理する必要があります。たとえばBRC規格(6) の第8.4.1項によると、高リスクエリア(high risk area)又は高度監視エリア(high care area)の食品製造エリアに入る時は靴を履き替えなければならず、このエリア用の靴は外部では履いてはならないと定められています。また、病原菌による汚染が上記のリスクのある製造エリアに持ち込まれないよう適切な管理を行わなければならないとも定められています。
• 洗濯と消毒
製造工程内で使用する靴は、常に清潔にしておかなければなりません。すなわち、洗って消毒し、病原菌の汚染を防止しなければなりません。洗濯の手順としては、洗剤(汚れの度合いと作業の種類に応じたもの)を使ってブラシで擦り洗いをし、それから、消毒液の塗布、塩素槽を歩くなどの消毒をします。また、従業員は清潔かどうかに気を配らなければなりません。洗い方が不適切だと病原菌を排除できないことがあります。ある研究報告書 (7) によると、海鮮食品工場で洗濯後の靴に付着している菌を試験したところ、Listeria monocytogenesの汚染が10.5%も見られたそうです。そのうちの1つは、製品の品質管理のために各部屋を回っている品質管理部従業員の靴でした。したがって、靴に汚染があると、工場の様々なエリアに汚染を拡散させてしまう可能性が高いといえます。
現在では自動靴底洗浄機による靴洗浄の技術があり、センサーで従業員を感知し、自動回転式のブラシで靴の上部及び/又は靴底(靴の種類により異なります)を磨いてくれます。これにより、従業員が自分で洗うより良い洗浄基準が管理できますし、また、使い方も簡単で安全です。さらに、ニーズに応じて洗剤や消毒液の調整もできます。製品にご関心がありましたら、ご連絡下さいませ。すぐに製品の説明とテストをさせて頂きます。
References
1.Margas, E., & Holah, J. T. (2014). Personal hygiene in the food industry. In Hygiene in Food Processing (pp. 408-440). Woodhead Publishing.
2.TAYLOR , J. H. , HOLAH , J. T. , WALKER , H. and KAUR , M. ( 2000 ), Hand and footwear hygiene: An investigation to defi ne best practice . R & D Report No. 112, Campden BRI.
3.Todd, E. C., Michaels, B. S., Greig, J. D., Smith, D., Holah, J., & Bartleson, C. A. (2010). Outbreaks where food workers have been implicated in the spread of foodborne disease. Part 7. Barriers to reduce contamination of food by workers. Journal of food protection, 73(8), 1552-1565.
4.1979年食品法の条文に基づき発せられた2020年保健省告示(第420号)「製造工具・用具の製造及び食品の保管方法」
5.https://www.fda.moph.go.th/sites/food/Shared%20Documents/GMP/GMPKM_20.pdf
6.BRC Global standards. 2018. Global Standard Food Safety issue 8
7.Gudbjörnsdottir, B., Suihko, M. L., Gustavsson, P., Thorkelsson, G., Salo, S., Sjöberg, A. M., … & Bredholt, S. (2004). The incidence of Listeria monocytogenes in meat, poultry and seafood plants in the Nordic countries. Food Microbiology, 21(2), 217-225.
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