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Frozen food storage management
冷凍は食品保存方法の1つですが、調理済み食品やインスタント食品、栄養が分解してしまいやすい食品など、劣化の早い食品、温度、光、酸素に弱い物質を含む食品によく使われます。製品中の水分を急速に固体にすることにより、物質の分子が反応を起こさなくなるため、食品が長く保存できるようになるのです。また、微生物の成長を抑え、寄生虫も殺してくれます。たとえば、USFDA (1) では、寿司や刺身などで生食する魚の場合、魚を少なくとも- 20℃で7日間、又は、- 35℃で15時間保存し、魚に含まれる寄生虫を制御することを推奨しています(条件は魚の大きさによって異なります)。
冷凍食品なのにどうして劣化するのか?
一般に、冷凍食品の劣化というのは、安全性というより、消費者の印象に影響を及ぼす側面での食品の品質変化をいうことが多いです(2) 。たとえば、物理的変化として、組織内の水分の移動による場合があります。冷凍中、温度の下降が十分に急速なものでなかった場合、浸透圧によって食品組織内の水分が移動し、食品の細胞が水分を失い、細胞壁が傷むので、食感が悪くなってしまいます。また、解凍時のドリップロス(Drip loss)も大きくなります。保存中については、温度の変動(fluctuation)など状態が不適切だった場合、大きな氷の結晶が多くなり、食感を損なったり食品の細胞壁を壊したりしてしまいます。保存容器が不適切だと食品表面の水分が失われ、冷凍焼け(freezer burn)を起こすこともあります。化学的変化としては、酵素の化学変化、脂肪の酸化、タンパク質変性の他、風味や色合いが損なわれたり、ビタミンなどの様々な機能性物質が失われたりします (3)。しかしながら、微生物の成長という面についていえば、それが抑制できさえすれば、冷凍状態はそれほど重要な問題ではありませんが、もし温度に大きな変動があると、微生物が再度成長してしまう恐れはあります。また、冷凍は微生物の成長を抑制するだけで、微生物を全て排除するわけではありません。ですから、微生物による二次汚染のリスクを防ぎ、食品の最大の安全を実現するためには、やはり製造工程の衛生配慮が必要となります。
冷凍食品内で起こる変化についてですが、冷却装置や電気系統の故障、密閉性が不十分な壁面からの冷気の損失、扉の開閉による冷気の損失、扉付近の結露により扉が密閉できなくなっている等、温度の変動があったり、適温よりも高温の時間帯があったりすると、劣化率は早まってしまいます。これらにより、食品の劣化が予測よりも早くなり、消費者の認める品質を得られなくなったり、安全基準を超えて微生物が成長してしまったりするのです。
冷凍食品の品質管理における5つのテクノロジー
現在、冷凍食品産業では、冷凍食品の品質を向上させ、エネルギー使用の効率化を図るために様々なテクノロジーやイノベーションを導入しています。これは、レシピの開発から良い工場のための構造システム配備まで多岐にわたる次元で行われていますが、分類すると以下のようになります。
1.食品添加物(Food additives)
現在では、凍結防止剤(cryoprotectants)といわれる添加物を用い、冷凍と解凍による食感の損失を減らすことができるようになっています。うち、小さな分子な物質はジメチルスルホキシド(Dimethyl sulfoxide)やプロリン(proline)等で、細胞に浸透し、細胞が損傷しないよう保護することができるものです。大きな分子の物質には不凍タンパク質(antifreeze proteins)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)、両極性高分子(polyampholytes)等があり、細胞の外側で働き、氷の結晶の形状を変えることで細胞に及ぼす悪影響を低減するメカニズムが使用されています(4) 。これらの物質は、細胞に突き刺さったり食感を悪くしたりする恐れのある氷の結晶の成長を抑えるもの、又は、組織の凝固点を下げるものです。したがって、冷凍食品のレシピ開発において、これらの物質の添加は冷凍食品の品質を改善する上での一つの選択肢となります。
2.冷凍前の工程(Pretreatment)
別の工程を加えることにより、冷凍食品の品質の変化を抑えます。たとえば、茹でることで、食品を変色させたり風味を変化させたりする酵素を抑制するなどです。これは、野菜・果物の製品によく使われます (2)。また、品質調整剤(色、風味、食感、又は凍結防止剤等)を食品に添加してから冷凍する場合、圧力を利用して食品に浸透させやすくします(5) 。
3.新冷凍テクノロジー(Novel Freezing technology)
新方式の食品冷凍の目的は、凍結率を向上させ、経済的価値を高めることです(2) 。たとえば、冷凍中に圧力を使用して氷の結晶の発生を抑える、衝突噴流式凍結(Impingement jet freezing)により凍結率を高める等があります。
4.温度変動モニタリング(Temperature fluctuation monitoring)
温度変動モニタリングは、冷凍食品の品質を間接的に表示するものとなります。というのは、これらの食品の劣化は温度と関連することが多いためです。リアルタイム方式のシステムを含む食品の品質モニタリングシステムにおいては、指標(indicator)を付けられたり、センサーが使用されたりします。
5.出入口温度管理(Entrance temperature control)
食品保管用の冷蔵室システムにおいて、倉庫の出入口は、人の出入口と商品運搬車の出入口のどちらも温度変化のリスクが最も高くなる箇所です。ここでは冷気が損なわれるだけではありません。その場所の湿度が高いと、結露が発生して水滴となり、凍って扉に固着してしまうこともあり(2) 、すると扉が閉まりにくくなったり、密閉できなくなったりしてしまい、冷蔵室内の温度が上昇して、内部に保管されている冷凍食品の品質に影響してしまいます。
そこで、ITO (THAILAND)では、日本の冷蔵室専用高速ドアをご紹介させて頂きます。特殊シート製、- 25から5℃までに対応しており、硬化もなく、内部がはっきり見えるものとなっています。ドアの縁の霜を防止するためのヒーター内蔵です。
製品にご関心がありましたら、ご連絡下さいませ。製品サンプルは弊社ショールームにてご覧頂けます。現場へのドア設置のご相談も喜んで承ります。
Reference
1.Parasites. [Online]: https://www.fda.gov/media/80777/download
2.Evans, J. A. (Ed.). (2009). Frozen food science and technology. John Wiley & Sons.
3.Zaritzky, N. (2006). Physical–chemical principles in freezing. In: D.W. Sun, ed. Handbook of Frozen Food Processing and Packaging. Boca Raton, FL: CRC/Taylor & Francis Group, pp. 3–33.
4.Liu, X., Pan, Y., Liu, F., He, Y., Zhu, Q., Liu, Z., … & Tan, S. (2021). A review of the material characteristics, antifreeze mechanisms, and applications of cryoprotectants (CPAs). Journal of Nanomaterials, 2021.
5.Sriwimon, W., & Boonsupthip, W. (2011). Utilization of partially ripe mangoes for freezing preservation by impregnation of mango juice and sugars. LWT-Food Science and Technology, 44(2), 375-383.
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