ITO Thailand Hygiene Blog
マイクロカプセル化
近年、食品科学者は、食品に、より有益な特性を持たせるための新しい革新的なツールを開発しています。例えば、機能性食品は、マイクロカプセル化技術と呼ばれるこの特別なツールによって、病気のリスクを低減したり、免疫力を向上させたりするだけでなく、健康を促進することができます。これは、栄養素や有益なバクテリアなど、食品の繊細な機能性を安定させ、保護・保持し、好ましくない相互作用を抑制するために使用されます。さらに、ポストバイオティクスなどの生理活性化合物(BACs)も同様にカプセル化によって送達することができます。このブログでは、マイクロカプセル化の紹介、そのプロセシング、利点、課題、そして世界の食品市場の状況について考察していきます。
マイクロカプセル化の工程
カプセル化は、一般的には食品加工において加工や保管条件から化合物材料を保護するために使用され、マイクロカプセル化は直径3~800マイクロメートル(μm)のカプセル化に、ナノカプセル化は10~1,000ナノメートル(1μm)の粒子サイズに、関連しています。(Ye & Chi, 2018) カプセル化には主に2つの要素があり、カプセル化される化合物はコア、カプセル化する材料はカプセル化素材と呼ばれています。(Choudhury 他 2021) 言い換えるなら、カプセル化素材はコア(通常は生理活性化合物)を内包しているのです。(Liu 他 2021). マイクロカプセル化には、カプセル化素材によっていくつかの技術がありますが、最もよく知られている技術は、ドリッピング、スプレードライ(噴射乾燥)、スプレーチング(噴射冷却)、コアセルベーション、流動層コーティング、押出、および乳化です。(Choudhury 他 2021)
利点と課題
新しい食品を開発する上で、消費者の利便性は常に重要な要素であるべきです。都会的なライフスタイルにより、人々の食事の摂り方は変化し、ジェルパック、ドリンクパウダー、リキッドショットなどの需要が高まっています。(Gray, 2021) さらに、カプセル化の使用は食品に限らず、食用フィルムやコーティングなどの食品包装においても、賞味期限の延長、栄養強化、酸化防止、抗菌効果など、有益な機能を複数備えています。(Chaudhary 他 2021) 活性カプセル化素材は、放出系または吸収系として機能することができます。放出系の例としては、抗酸化剤、抗菌剤、またはCO2放出剤が挙げられます。一方、吸収系では、(果実熟成酵素を減らす)エチレン捕捉剤や(好気性細菌の増殖を防ぐ)O2捕捉剤、水分吸収剤などが考えられます。(Almasi 他 2020) 先に述べたように、高齢者やアスリート、妊婦など、特別な食事が必要な人々には、栄養素(ビタミンやミネラルなど)の添加が必要です。
しかし、この技術にはまだ課題があります。撥水性のあるマイクロカプセル化素材の多くは柔軟性に欠け、消費者が気付きやすいことから、官能評価の質が悪くなってしまうため、マイクロカプセル化に適した素材は現在非常に限られているのです。(INNOV’IA, 2022)また、カプセル化には、特定の企業の専門知識が必要であり、まだ開発の初期段階にあることから、さらなる研究も必要です。特に食品安全面では、微生物学的安全性を制御するためのカプセル化など、いかなる妥協も許されません。最後に、マイクロカプセルの安定性、透過性、放出・吸収メカニズムなど、多くのマイクロカプセルの特徴を適切に最適化する必要があるため、温度や圧力の異なる雰囲気でのマイクロカプセルの安定性は不確かです。(MarketsandMarkets, 2020)
世界の食品市場におけるマイクロカプセル化
マイクロカプセル化は、医薬品やヘルスケア分野で広く利用されており、特に医薬品に含まれる好ましくない苦味や臭いを吸収する機能や、薬物の送達安定性を高める機能などがあります。(MarketsandMarkets, 2020) 新型コロナの大流行により、免疫力向上のためのビタミン剤やサプリメントの需要が高まり、規制緩和も供給を支え、消費者もより入手しやすくなりました。
機能性食品パンデミックの中、健康的な食生活への意識が高まり、消費傾向が高まっていますが、それはマイクロカプセル化の活用と関連しています。Nestléなどの大手食品会社が、Bearブランドの牛乳、Cerevitaのシリアル、Maggiのソースなどの製品ラインアップを通じて機能性食品を発売する一方、Givaudan(スイスの香料メーカー)は、カロリーを30%、脂肪分を75%低減した代替肉用に、プライムロック+という脂肪カプセル化技術を世に送り出しています。(The Business Research Company、2022)プロバイオティクス飲料では、胃の酸性条件下でプロバイオティクスが劣化するのを防ぎ、ターゲット領域である腸に届けるために、マイクロゲルによるカプセル化が頻繁に使用されています。 (Lim, 2021)
間違いなく、マイクロカプセル化は、信頼できる革新的な食品技術であることが証明されており、その利点は欠点を上回っているようです。機能性食品とプロバイオティクス製品により、マイクロカプセル化は、消費者に大きな価値を提供しています。新しいカプセル化素材の開発により、より幅広い食品をカプセル化することが可能になります。消費者はさらなる健康効果を期待することができると考えられているのです。ITO Thailandは、総合的な食品衛生管理製品およびサービスによって消費者のみなさまに安全な食品を提供すると同時に、カプセル化技術の開発に成功したものと考えております。
参考文献
Almasi, H., Jahanbakhsh Oskouie, M., & Saleh, A. (2020, June 26). A review on techniques utilized for design of controlled release food active packaging. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 61(15), 2601–2621. https://doi.org/10.1080/10408398.2020.1783199
Chaudhary, V., Thakur, N., Kajla, P., Thakur, S., & Punia, S. (2021). Application of Encapsulation Technology in Edible Films: Carrier of Bioactive Compounds. Frontiers in Sustainable Food Systems, 5. https://doi.org/10.3389/fsufs.2021.73
Choudhury, N., Meghwal, M., & Das, K. (2021, June 18). Microencapsulation: An overview on concepts, methods, properties and applications in foods. Food Frontiers, 2(4), 426–442. https://doi.org/10.1002/fft2.94
Gray, N. (2021). Beyond supplements: How are new encapsulation technologies driving innovation – WATCH. NutraIngredients. Retrieved September 26, 2022, from https://www.nutraingredients.com/Article/2019/03/22/Beyond-supplements-How-are-new-encapsulation-technologies-driving-innovation-WATCH
INNOV’IA. (2022). Microencapsulation as an innovative tool to enhance the functions and properties of bioactive ingredients. Retrieved September 26, 2022, from https://www.innov-ia.com/microencapsulation-as-an-innovative-tool-to-enhance-the-functions-and-properties-of-bioactive-ingredients/
Lim, G. Y. (2021). Survive the journey: PERKii sees steady sales of probiotic drinks made with exclusive encapsulation technology. NutraIngredients-Asia. Retrieved September 27, 2022, from https://www.nutraingredients-asia.com/Article/2021/09/01/Survive-the-journey-PERKii-sees-steady-sales-of-probiotic-drinks-made-with-exclusive-encapsulation-technology
Liu, B., Jiao, L., Chai, J., Bao, C., Jiang, P., & Li, Y. (2021). Encapsulation and Targeted Release. Food Hydrocolloids, 369–407. https://doi.org/10.1007/978-981-16-0320-4_11
MarketsandMarkets. (2020). Microencapsulation Market. Retrieved September 26, 2022, from https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/microencapsulation-market-83597438.html
The Business Research Company. (2022). Food Encapsulation Global Market Report 2022. ReportLinker. Retrieved September 27, 2022, from https://www.reportlinker.com/p06282672/Food-Encapsulation-Global-Market-Report.html?utm_source=GNW
Ye, C., & Chi, H. (2018, February). A review of recent progress in drug and protein encapsulation: Approaches, applications and challenges. Materials Science and Engineering: C, 83, 233–246. https://doi.org/10.1016/j.msec.2017.10.003
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