ITO Thailand Hygiene Blog
高圧処理
超加工食品(UPFs)は肥満、冠状動脈性心疾患、高血圧、数種の癌、その他多くの疾患など非感染性疾患(NCDs) (3) と関連しています(1)。高圧処理(HPP)は、より健康的な食品加工方法として、最小限の食品加工技術、化学物質フリー、クリーンラベル製品といった消費者のニーズに応えることができる、新しい食品加工方法として紹介されています (2) 。
HPPとは?
高圧処理とは、常温付近で10分以内の短時間に400~600MPaという高圧をかける食品加工法の一種です(2)。これにより、新鮮な味を維持し、パッケージ食品の賞味期限を延ばせるため食品廃棄物を減らすことができ(14)、化学物質や保存料を使うことなく腐敗細菌に対する安全性を確保することができます(8)。
HPPのメリットとデメリット
HPPは常温で食品を加工することができますが、高温でも低温でも加工できるという柔軟性も持っています。この加工技術では、バクテリア、イースト菌、カビ、ウイルスなどの有害な微生物が不活性化されることが証明されています。HPP加工された食品の多くは、パッケージ食品に使用されるため、クロスコンタミネーション(交差汚染)のリスクは低いのです (11) 。また、リステリア菌に起因するリステリア症などの食中毒についても、HPPは他の治療法に比べ食の安全に対する懸念が最も少ないため、低減させることができます(6)。
次に、HPP加工食品を非HPP加工食品と比較した場合、HPP加工食品は賞味期限が10~15日から120日と大幅に延びており、消費者にとってより高い信頼性が得られています(8)。また、非加熱の食品加工技術であるため、食感や外観、味、栄養価など食品の特性や品質への影響も少なくなっています (6) 。よって、HPPは食品の物理的特性を保持することができる、非破壊的な技術の1つであると考えられます。最後に、従来の加熱殺菌に比べ、エネルギー消費量が約20%少ないことから、持続可能な食品加工技術としても考えられています(8)。 非破壊加工技術は、どのパラメータも極端なレベルでは行われないことから、「ハードルテクノロジー」、つまり微生物の増殖を抑制する一連の方法の使用に類似したもので、食品の品質劣化を引き起こすことはありません。ハードルテクノロジーの詳細については後述します。
しかし、細菌の芽胞は耐圧性があり、加圧状態でも生き延びられることには言及しておく必要があります(2)。先にも述べた通り、この加工技術は高圧に関わるため、フレキシブル包装が求めらるガラスやブリキなどのリジッド包装には不向きなのです (11) 。
複合加工
HPPは、様々な加工方法と組み合わせることで、より優れた効果を発揮し、より安全な食品を作ることができます。望ましい組み合わせとしては、複数工程のHPP、低温または高温でのHPP、HPPと天然抗菌成分など、その他多数あります(11)。それは「ハードルテクノロジー」としても知られているもので、有害な病原体が食品中で生き残るためには、これらの「ハードル」を克服する必要があるのです (10) 。ハードルテクノロジーは、食品の安全性と品質を確保しつつ、不要な微生物を効果的に抑制するために、正しい組み合わせの順序でプロセスを設計する必要があります(10)。
現在のHPP製品の世界情勢
現在、消費者の健康に対する意識の高まりから、食品メーカーの製品表示も変化してきています。食品の安全性の向上、新鮮で栄養価の高い食品などの要件を備えた、合成化学物質や保存料を使用しない新鮮な食品に対する消費者のニーズが高まっており、HPPはそのすべての要件を満たしています。クリーンラベルの食材、製品ラベル、賞味期限の延長は好ましい食品として挙げられ、そこでHPPが主流となったのです。 例えば、HPPの食肉製品はナトリウムの使用量を減らすことができ、「低ナトリウム製品」というラベルを付けることができます(4)。
人間用の食品だけでなく、HPPはペットフードにも適用することができます(13)。私たちのペットも、サルモネラ菌、有害な大腸菌、リステリア菌などの好ましくない細菌による食中毒の可能性が低い、生肉の食材を摂取することができるのです(13)。
HPP 製品
現在、市場では数え切れないほどのHPP製品が販売されていますが、その一例をご紹介しましょう。
1.HPP ジュース: ドイカム(Doi Kham) は、HPPコールドプレスフルーツジュース5種類を発売しました。HPPは非熱加工なので、ビタミンや栄養素を保持することができます (7) 。
2.肉・鶏肉製品:食品加工会社Hormel Foodsは、抗菌剤を使用しないため、賞味期限が長いクリーンラベルの肉製品を発売することができます(12)。
3.ジャム: HPPは非加熱殺菌加工方法なので、HPPジャムは従来の加熱処理されたジャムよりも色合いが格段に良いです(5)。
ここまでHPPがいかに食品加工の品質と安全性を向上させてきたか、また、幅広い製品においても議論してきました。新しい食品加工技術は、食品の安全性を高めながら、より質の高い食品を見つけ出してきたのです。ITO Thailandでは、オートメーション化技術と総合的なコンサルティングサービスで、みなさまの食品工場の新しい衛生ソリューションをご提案してまいります。詳しくはこちらをクリック
References
1.Australian Institute of Health and Welfare. (2019). Poor diet, Dietary guidelines. Retrieved February 19, 2023, from https://www.aihw.gov.au/reports/food-nutrition/poor-diet/contents/dietary-guidelines
2.Balasubramaniam, V. M. (2021). Process development of high pressure-based technologies for food: research advances and future perspectives. Current Opinion in Food Science, 42, 270–277. https://doi.org/10.1016/j.cofs.2021.10.001
3.Chen, X., Zhang, Z., Yang, H., Qiu, P., Wang, H., Wang, F., Zhao, Q., Fang, J., & Nie, J. (2020). Consumption of ultra-processed foods and health outcomes: a systematic review of epidemiological studies. Nutrition Journal, 19(1). https://doi.org/10.1186/s12937-020-00604-1
4.Choudhury, N. R. (2022). Keeping Clean Labels Simple for Safer, Healthier Food. Food Safety. Retrieved February 19, 2023, from https://www.food-safety.com/articles/7862-keeping-clean-labels-simple-for-safer-healthier-food
5.Echigo Seika. (2023). High-pressure treatment of food. Echigo Seika Co., Ltd. Retrieved February 20, 2023, from https://www.echigoseika.co.jp/en/enjoy/high-pressure-technology/04.php
6.European Food Safety Authority. (2022). High-pressure processing: food safety without compromising quality. Retrieved February 19, 2023, from https://www.efsa.europa.eu/en/news/high-pressure-processing-food-safety-without-compromising-quality
7.Hong, T. H. (2020). Doi Kham launches new HPP juice. Mini Me Insights. Retrieved February 20, 2023, from https://www.minimeinsights.com/2020/03/14/doi-kham-launches-new-hpp-juice/
8.JBT Corporation. (2022). HPP: sustainable advantages of clean technology. Retrieved February 19, 2023, from https://blog.jbtc.com/2022/03/10/hpp-sustainable-advantages-of-clean-technology/
9.Lingle, R. (2016). Surprising developments in HPP packaged foods. Packaging Digest. Retrieved February 20, 2023, from https://www.packagingdigest.com/food-packaging/surprising-developments-hpp-packaged-foods
10.Mukhopadhyay, S., & Gorris, L. G. M. (2014). Hurdle Technology∗. Encyclopedia of Food Microbiology, 221–227. https://doi.org/10.1016/b978-0-12-384730-0.00166-x
11.Rode, T. M. (2022). Worth knowing about high pressure processing of food. Nofima. Retrieved February 19, 2023, from https://nofima.com/worth-knowing/worth-knowing-about-high-pressure-processing-of-food/
12.Shire, B. (2017). Advancing food safety: High-pressure processing evolves. Food Business News. Retrieved February 20, 2023, from https://www.foodbusinessnews.net/articles/9601-advancing-food-safety-high-pressure-processing-evolves?page=2
13.Teal, D. (2022). Manufacturers Turn to HPP for Consumer Demand. Foodengineeringmag. Retrieved February 19, 2023, from https://www.foodengineeringmag.com/articles/100733-manufacturers-turn-to-hpp-for-consumer-demand
14.Wessels, L. (2019). Sustainability Advantages of High Pressure Food Processing. Packaging Strategies. Retrieved February 20, 2023, from https://www.packagingstrategies.com/articles/90948-sustainability-advantages-of-high-pressure-food-processing
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