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ウルトラファインバブル(UFB)テクノロジー(パート1)
ウルトラファインバブルテクノロジーとは?
気泡は、液体中に拡散した気体の形態ものです。気泡の中には空気やその他のガスが含まれている可能性があり、これらの気泡は一般に安定性に欠けます。気体の密度は液体の密度よりも低いからです。その結果、大きな気泡が液体の表面に上昇し、急速に破裂する傾向があります。しかし、これらの泡が マイクロ・ナノ粒子レベルまで小さくなると、安定感が増します。大きさが100マイクロメートル以下のものをマイクロバブル(Microbubble)、またはファインバブル1と呼び、サイズが (1)マイクロメートル未満の場合、ナノバブル(Nanobubble)やウルトラファインバブル (1) と呼ばれ、より安定性があり、数週間または数か月間安定することがあります (2)。これより大きい気泡では、安定するのは数秒です。液体中に分散した気泡がより安定していると、特性も異なります。たとえば、液体中に分散した粒子レベルの気泡の形状のガスの移動量が増加し(increase gas mass transfer)、気泡と接する面積が増加します。これにより、小さな気泡が破裂したときに、気液面界の反応が増加します。それは酸化反応を非常に早く引き起こすことができることなどといった (3)、小さなフリーラジカルを生成する小さなエネルギーを生み出します。さらに、より安定した気泡では、反応性ガス(オゾンガスなど)を液体に封入し、空気との反応を防ぐことも可能です。今まで述べてきたテクノロジーは、様々な面で活用することができます。ここでは、食品業界に関連する活用事例に特化して、この技術の適用についてご紹介します。
ウルトラファインバブルテクノロジーの利点は何か?
ウルトラファインバブルテクノロジーは、農業分野での原材料の生産、食品産業における食品製造から廃棄物管理までのプロセスなど、多くの分野で役立ちます。食品業界のサプライチェーン全体をカバーしているとも言えます。
1.原料の生産(農業・畜産・水産業)
研究によると、ウルトラファインバブルテクノロジーは、種子の発芽や成長を促進するなど、農業の生産性を向上することができます。ある研究結果3によると、農業用水にウルトラファインバブル(窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素など)を加えると、白菜、ニンジン、そら豆の発芽率が6−25%増加することがわかりました。ウルトラファインバブルにより、種子の細胞壁を柔らかくするフリーラジカルが生成されるため、植物はよりよく発芽することができます。また、窒素や、酸素、炭素など、植物が必要とする栄養源を増やすことで、植物の成長を助けます。別の研究結果 (4)では、ウルトラファインバブルを使用すると、スイカとマスクメロンの栽培に使用される水と肥料の量を最大20%削減できるだけでなく、収穫量とビタミンCの含有量も増加することがわかりました。
水産業でも同様に、ウルトラファインバブルを使用し、酸素などの水産動物の成長に必要な気体を増やすことで、生産量が増加することがわかりました。また、ウルトラファインバブルが分解されるときに発生するフリーラジカルによって、水中の不純物の除去にも繋がります。これにより、エビ (5) やティラピア (6) などの水産動物の成長率を高めることができます。さらに、ウルトラファインバブルを使用して、家畜や水産動物にとって有益な微生物の数を増やすことにより、生産性を間接的に高めることができます。例えば、Bacillus、Thiobacillus、Saccharomyces (酵母)、Tetraselmis sp. (微細藻類) など7の微生物により、家畜を健康的に生育し、免疫を強化し、動物の病気や感染の発生率を減らすことができます。
2.原料と表面の不純物の除去
これらのマイクロおよびナノサイズの気泡は、食品業界の化学的、生物工学的、物理的な観点で、汚染(contamination)を減らすのに役立ちます。原材料の洗浄に使用する水中の化学物質を除去する目的で使用される場合があります。表面の不純物の除去、特に食品接触エリア (続きを読む)または原材料に付着した不純物を除去するのに役立ちます。この微細な泡の不純物を取り除くことは、気泡の破裂によるフリーラジカルの生成(酸化効果の強いオゾンガスを使用することが多い)など、いくつかのメカニズムで構成されています。殺虫剤 (8) などの薬品を酸化させ、微生物の死 (9) を助け、微生物のバイオフィルム (10) (biofilm)も除去します。とりわけ、オゾンガスの微細な気泡が分散した水では、粗い表面や溝の隅々によりよく浸透します。この技術によって、ガスをより効率的に必要な場所に届けることを助けます。この他に、気泡の破裂など、不純物を除去するための他の物理的メカニズムは、汚染物質を表面から剥がし、または、泡の表面にある疎水性不純物(油汚れなど)を吸い取る能力を生み出します。その結果、洗浄が必要な表面から容易に剥がれる油の膜ができます(11) 。
飲料水をろ過するためのメンブレンシステム(membrane)など、目詰まり(fouling)を起こしやすく洗浄が難しい素材に対して、ナノレベルの微細気泡を使用することで、目詰まりの原因となる粒子を取り除くことができます(2) 。更に、塩の不純物を沈殿させやすくするのに役立ちます。これにより、目詰まりを起こす粒子が少なくなり、化学薬品を使用しなくても、長期的に目詰まりのリスクが低くなります。
それ自体で洗浄または消毒することに加えて、ウルトラファインバブルは、活性炭浄水などの他の汚染物質除去ステップを促進し、より効率的にするのにも役立ちます。ウルトラファインバブルを使用すると、活性炭の鉛吸着率が最大336%増加します(12) 。
農業、畜産、水産業、原材料管理や、さまざまな表面の洗浄や消毒に使われるほか、ウルトラファインバブルテクノロジーは食品の貯蔵寿命の延長、食品製造工程における生産性の向上、排水処理にも使用できます。次回の記事でこれらについてご紹介します。
ITO(THAILAND)LTD.は、食品・その他の産業・家庭向けに、粒子レベルの気泡を生成する日本からの特許技術を紹介したいと考えています。ウルトラファインバブルテクノロジーに興味がある方は、弊社までご連絡ください。ご相談を受け、製品について学び、製品試験の予約を即受付いたします。
References
1.Fan, W., Li, Y., Lyu, T., Chen, Z., Jarvis, P., Huo, Y., … & Huo, M. (2023). A modelling approach to explore the optimum bubble size for micro-nanobubble aeration. Water Research, 228, 119360.
2.Foundas, A., Kosheleva, R. I., Favvas, E. P., Kostoglou, M., Mitropoulos, A. C., & Kyzas, G. Z. (2022). Fundamentals and applications of nanobubbles: A review. Chemical Engineering Research and Design.
3.Ahmed, A. K. A., Shi, X., Hua, L., Manzueta, L., Qing, W., Marhaba, T., & Zhang, W. (2018). Influences of air, oxygen, nitrogen, and carbon dioxide nanobubbles on seed germination and plant growth. Journal of Agricultural and Food Chemistry, 66(20), 5117-5124.
4.He, J., Liu, Y., Wang, T., Chen, W., Liu, B., Zhou, Y., & Li, Y. (2022). Effects of nanobubble in subsurface drip irrigation on the yield, quality, irrigation water use efficiency and nitrogen partial productivity of watermelon and muskmelon. International Agrophysics, 36(3), 163-171.
5.Rahmawati, A. I., Saputra, R. N., Hidayatullah, A., Dwiarto, A., Junaedi, H., Cahyadi, D., … & Rochman, N. T. (2021). Enhancement of Penaeus vannamei shrimp growth using nanobubble in indoor raceway pond. Aquaculture and Fisheries, 6(3), 277-282.
6.Mahasri, G., Saskia, A., Apandi, P. S., Dewi, N. N., & Usuman, N. M. (2018, April). Development of an aquaculture system using nanobubble technology for the optimation of dissolved oxygen in culture media for nile tilapia (Oreochromis niloticus). In IOP Conference Series: Earth and Environmental Science(Vol. 137, No. 1, p. 012046). IOP Publishing.
7.Fujaya, Y., Aslamyah, S., Rukminasari, N., & Sari, D. K. (2020, April). Nanobubble technology in synbiotics production for animal husbandry and fisheries by the minari small business group. In IOP Conference Series: Earth and Environmental Science(Vol. 492, No. 1, p. 012015). IOP Publishing.
8.Ikeura, H., Hamasaki, S., & Tamaki, M. (2013). Effects of ozone microbubble treatment on removal of residual pesticides and quality of persimmon leaves. Food Chemistry, 138(1), 366-371.
9.Mahakarnchanakul, W., Klintham, P., Tongchitpakdee, S., & Chinsirikul, W. (2015). Using sanitizer and fine bubble technologies to enhance food safety. In FFTC-KU International Workshop on Risk Management on Ahrochemicals through Novel Technologies for Food Safety in Asia(pp. 1-19).
10.Shiroodi, S., Schwarz, M. H., Nitin, N., & Ovissipour, R. (2021). Efficacy of nanobubbles alone or in combination with neutral electrolyzed water in removing Escherichia coli O157: H7, Vibrio parahaemolyticus, and Listeria innocua biofilms. Food and Bioprocess Technology, 14, 287-297.
11.Jin, N., Zhang, F., Cui, Y., Sun, L., Gao, H., Pu, Z., & Yang, W. (2022). Environment-friendly surface cleaning using micro-nano bubbles. Particuology, 66, 1-9.
12.Kyzas, G. Z., Bomis, G., Kosheleva, R. I., Efthimiadou, E. K., Favvas, E. P., Kostoglou, M., & Mitropoulos, A. C. (2019). Nanobubbles effect on heavy metal ions adsorption by activated carbon. Chemical Engineering Journal, 356, 91-97.
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