ITO Thailand Hygiene Blog

Sep 11 2023

海底からの新たな食料源

            今、環境にやさしく、資源不足に対応する持続可能な新たな食料源が注目を浴びています。今回は、海底からの新たな食料源である海藻とクラゲについてお話ししましょう。

            現在、環境問題や地球温暖化、人口増加、自然災害等による資源不足が言われていますが、食品業界では、環境の変動を抑え、資源利用を低減したり効率化したりするため、より持続可能な新たな食料源の模索や、地球温暖化の原因の一つとなるの低減が注目を浴びています。たとえば、飼料、畜産場の面積、畜産物の汚物処理に資源を必要とする動物性タンパク源でなく、昆虫食によるタンパク質、植物性タンパク質といった資源利用の少ない、より持続可能な代替タンパク源の使用、タンパク質細胞培養を行うなどです。詳しくは、ITO(THAILAND)のHygiene blogでお読み頂けます。

            今回は、全世界の人々にとって十分なタンパク源を賄うものとして注目を浴び、期待の高まっている海底からの新たな食料源をご紹介します。海洋性タンパク質の強みは、海水中でのタンパク質生成ができ、また、人の食料源として海洋を利用するため、食品製造における淡水資源の不足を解消できるということだといえます。

クラゲ(Jellyfish)

            海洋からの食料の一つは、馴染み深いものであるにもかかわらず見過ごしてしまいがちなクラゲです。普段、クラゲは有毒生物の一つ、あるいは、ちょっとしたおつまみ程度にしか考えられていないかもしれません。しかし、実は現在、クラゲ食は非常に関心が高まっているものなのです。一つの理由として、現在、地球温暖化や気候変動によりクラゲの量が増加していることが挙げられます[1]。また、クラゲは主な成分が水とタンパク質であり、水で構成される部分が多いため低カロリーで、最も多いタンパク質はコラーゲンであり、脂肪と糖分が非常に低く、様々なミネラル源でもあるため、良い食料源だという報告もあります[2]。

            2011〜2015年、クラゲを原料とする食品は全世界で10,000〜17,000トン/年もの量が製造されました[3]。ここからわかることは、市場におけるニーズの成長です。しかしながら、食用になるのは、一部の種類のクラゲでしかありません(約35品種)。また、有毒な種類もあり、食感が独特だという問題もあります。なお、クラゲは直接人の食料源とするだけでなく、鶏や豚の飼料、養殖魚の餌としても使われています。

海藻・藻類(Seaweed & algae)

            現在、大型海藻類(Macroalgae)及び微細藻類(Microalgae)を含む海藻は、様々な側面の持続可能性の実現に利用されています。たとえば、酸素生成源、二酸化炭素の除去、汚水処理、クリーンエネルギー源(bio-ethanol)等です[4]。もちろん、人の食料源にもなりますが、淡水が必要なく、作物栽培や畜産に比べ、面積あたりの栄養素が高い食料源なのです。

            海藻の栄養価の高さは、次の通りです [1] 。

            •ミネラル:鉄分、カルシウム、ヨウ素、セレン、カリウム

            •ヴィタミン:ヴィタミンB12、ヴィタミンC

            •オメガ3脂肪酸(良質の脂肪)

            •食物繊維

            •タンパク質

            •機能性物質(炎症の抑制及び活性酸素の抑制)

            また、海藻の調理法としては、食品として海藻そのものを食べるだけでなく、タンパク質エキスなどサプリメントやエキスの形態でも摂取することができ、一部の海藻は膜を生成したり食感を変化させてゼリー状にしたり、粘度を増して保水性を持たせたり[5]など、食品添加物(additive)としても使用できます。さらに、着色料、活性酸素抑制物質、着香料[6]、分解される素材の容器[1]としても使用できるのです。

            海藻もクラゲと同様、飼料として魚の養殖におけるタンパク源として使用されます。海藻中に見られるのは良質の脂肪のため、病気の予防ができて魚の成長が良くなり、魚の病気が減ったという報告もあります[6]。

            つまり、海洋からの食料源は興味深いもので、新しい製品開発の余地があり、将来の食料持続可能性を高めることができるといえます。しかしながら、将来の新製品の開発において新たな食品を導入するには、安全への配慮が必要です。そこで、もし機会があれば、次回はUNによるFAOの視点について、こうした新たな食料源の安全性に関する見解にどのようなものがあるか、食品製造におけるこうした原材料の導入にはどんな点に注意したらよいのかをお話ししていきたいと思います。

References

1.2022. Thinking about the future of food safety – A foresight report.Rome.

https://doi.org/10.4060/cb8667en.

2.Hsieh, Y. P., Leong, F. M., & Rudloe, J. (2001). Jellyfish as food. In Jellyfish Blooms: Ecological and Societal Importance: Proceedings of the International Conference on Jellyfish Blooms, held in Gulf Shores, Alabama, 12–14 January 2000 (pp. 11-17). Springer Netherlands.

3.Duarte, I. M., Marques, S. C., Leandro, S. M., & Calado, R. (2022). An overview of jellyfish aquaculture: for food, feed, pharma and fun. Reviews in Aquaculture, 14(1), 265-287.

4.https://www.bio100percent.com/wwt/algae-farming/

5.Afonso, N. C., Catarino, M. D., Silva, A. M., & Cardoso, S. M. (2019). Brown macroalgae as valuable food ingredients. Antioxidants, 8(9), 365.

6.Brien, R. O., Hayes, M., Sheldrake, G., Tiwari, B., & Walsh, P. (2022). Macroalgal Proteins: A Foods, 11(4), 571.

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